親です。

読んだ本とかについて書いてます

日記 - 12.MAR.2020

お疲れ様です。日記です。グダグダ疲れたな〜〜って言ってるだけです。

疲労

なんか最近やけに疲れてるな、と感じる。何か漠然としたものについて考えなきゃという義務感がもわっと頭を包んでて、それを感じながらTwitterしたりしてる。ゴールデンウィーク明けくらいからこの傾向が強くて、五月病かな? といま思ったが、別にこの春から新しい環境になったわけでもないしそれは変か。まあ名前がついたところで困った状況は改善しないんだけど。

こういうの、まあ俺によくある原因のひとつが、タスクを抱えていて常にバックグラウンドでそのことを気にしているから疲れてしまう、というのがある。なので、知らない間に抱えてしまっているタスクを書き出して潰してやると良い気がする。

今持っているタスクは、

  1. 仕事
  2. 小説
  3. 感想とかそういうの
  4. 個人的な開発
  5. 英語
  6. 読書
  7. 日々の家事育児

おろせるのは感想と個人開発。なんか、最近仕事がうまいこと進まず悶々とし、そうすると将来転職できるのかなあなんてことも考え、それで仕事じゃなくて個人開発して勉強しないと、と思ってしまう。仕事、最近はFileMakerでやってるんだけどFileMakerは本当よくわかんなくてポジティブな感情を抱けていない。よくないなとは思うんだけど。

あと小説。
小説、だいたい4割くらい書けたかなと思うんだけど、やっぱりこう未熟さを痛感する。自分の文章にいまいち入っていけなくて唸ってる。まあ小説だろうな疲れの原因は。

これ一回書き上げて、テーマを見つけられそうならそこをひとつ軸作りたい。多分家族とか関係性の話だろうな。それを補強するエピソードをもっと入れていきたいな。

俺がグッとくるのってやっぱテーマをどう描くかってことで、そこを補って自分で自分の文章を面白いと思えるといいなと思う。ちょっとスッキリしたな。小説書きます。

インターネットで創作論を語るのはダサい:訂正版

おつです。 「インターネットで創作論を語るのはダサい」っていう記事を書いたんですが、内容がよくないなと思ったので、そこらへんをまとめます。ほぼ日記。


【目次】


元記事

まずは元記事から。

創作論を語るのはダサい

創作論を語るのはダサい。

これ、Twitterのタイムラインでちょいちょい見て、分かるなー、けど俺は面白いからやっちゃうんだよなーと思ってた。ダサいって思われる理由って多分、創作論する人が面白い小説書いてない問題とか、書かずに創作論ばっかりやってんのが逃げだろって話とか、そもそも創作論の内容が低レベルすぎてつまらないとか、脚本術の話とかが鑑賞行為に水をさしてるとか、そういう感じだと思う。

分かる、すごく分かる。全部これ思ってます俺も。でもその一方で俺は脚本術が好き。すげー恥ずかしいなと思いながらもやっちゃってるんだけど、これだけの恥を乗り越えてやってしまう創作論、どこが面白くてやってんのか一回まとめとこうと思います。

脚本術・創作論のどこが面白いのか

面白さ、について考えるのは面白い

物語がなぜ面白いと言えるのか、面白いとはなんなのかということについて考えること自体が面白い。なんで自分はいま面白いと感じたんだろう? と遡って、感覚を理論に落とし込めた瞬間が気持ち良い。

面白い、というのは主観だし、自分の身ひとつあれば心理学でいう内観法的に面白さの根元に潜っていけるのもポイント。手軽に始められて常に楽しい趣味。小説かけなかったころ線形回帰のこととか勉強してめっちゃ楽しかったんだけど、あれは延々自分の頭の中で証明について考え続けられたのがよくて、脚本術もそれができて嬉しい。

文学について考えられる

脚本術をやってると、物語と小説の違いが浮き彫りになる瞬間がある。例えば文章とか演出技法とか。俺は一旦脚本術を経由して、作る側の視点を取ってからでないと文学について取り組めない人間だったので、脚本術によって文学させてもらう機会を得ているなと思う。

なぜ漫画や映画ではなく小説を書くのか、ということについても考えられる。二次元や三次元のメディアをなぜ選ばないのか、これにちゃんと答えられる文字書き、意外とあんまり見ない。

あとどう書くのかって視点は文学的にも全然ある視点の持ち方なので、そんなに恥ずかしく思うこともないと思う。

日本小説技術史 - Amazon

インプットの効率が上がる

技術について考えることが多くなると、漫然と小説を書いていた頃と比べて問題の細分化ができるようになるし、普段から何か見たり読んだりしていても得るものが多い。インプットの効率が上がる。まあこれは脚本術自体の効能というか、それを通じて小説について整理する力がついたという話だと思う。

創作論なんてやらずにアウトプットせえやってのも分かるが、俺は脚本術をやりつつアウトプットするのが合ってました。自分で全て考えるのも楽しいんだが、枝葉末節についていちいち考えるのも大変なので、最近は気になってるポイントについて書いてありそうな本をさっさと買って確かめている。

作品鑑賞の視点が持てる

作品を鑑賞していてこころ動かされるのと別に、作家の技術に感嘆することがある。こういう楽しみが増えるのもよかったポイント。

野暮なことが言える

申し訳ないんだが、野暮なことを言いたいだよな俺は。俺は小説なんてどれも同じに見えると思って書き始めた人間なので、物語を神聖視している人に対して冷や水を浴びせるために書いている面もある。意地悪だけど。

最後に

というわけで脚本術や創作論、ダサいと思われるのも分かるんだけど面白いので、語りたい人は語ってね〜〜と思う。

まあでもひとつ言うとするなら、創作論について語っている内容自体が面白くないってのはどうにかしたくて、そのためにいろんな作品を見たりして、ここでもこれが使われてる! みたいな引き出しの多さだけは確保しておこうかなって感じ。

脚本術とか創作論はどっちかというと評論的なジャンルで、評論に面白いものと面白くないものとがあるように、創作論にも面白いものと面白くないものとがあるのは当たり前。創作論を語るのがダサいというか、つまんない創作論を語るのはそりゃまあ滑ってんだからダサい。色々考えて新しいネタについて語れるといいなと思う。

以上。

記事を書いた経緯

経緯としては元記事にも書いてあるが、

創作論を語るのはダサい。
これ、Twitterのタイムラインでちょいちょい見て、分かるなー、けど俺は面白いからやっちゃうんだよなーと思ってた。[...]すげー恥ずかしいなと思いながらもやっちゃってるんだけど、これだけの恥を乗り越えてやってしまう創作論、どこが面白くてやってんのか一回まとめとこうと思います。

というもの。加えて、タイムラインにいる人への「俺はダサいって分かってますよ」という目配せがある。

悪かったところ

この記事の概要を表面的にさらうなら「創作論がダサいというのは分かってるんだけどこういう面白さがある」というもの。
ただ、実際にダサいかな? って思いながら創作論を勉強したり発言したりしている当事者からしたら、「創作論はダサいし、ましてや創作論の意義を語れない・面白い創作論を語れないやつはカス」という受け取り方になる。
単純にこの後者のメッセージがよくないし、この二重性が異論の封じ込めになっててタチ悪い。

問題点1:「創作論はダサい」=「俺の(お前の)創作論はダサい」

ダサいって思われる理由って多分、創作論する人が面白い小説書いてない問題とか、書かずに創作論ばっかりやってんのが逃げだろって話とか、そもそも創作論の内容が低レベルすぎてつまらないとか、脚本術の話とかが鑑賞行為に水をさしてるとか、そういう感じだと思う。
分かる、すごく分かる。全部これ思ってます俺も。でもその一方で俺は脚本術が好き。すげー恥ずかしいなと思いながらもやっちゃってるんだけど、[...]

ここ、ダサいと思われる理由を列挙した後で、「恥ずかしいけど面白いからやってます。」とやっている。恥ずかしいということを前提として扱っている一方で、個人の話として扱うことで「恥ずかしいか否か」というところに焦点を当てさせないようにしている。
個人の態度のようで「最後に」のところとかはべき論になっており、こういう封じ込めは論法として卑怯。

問題点2:「こういう面白さがある」=「意義を提示できないなら語るな」

なぜ漫画や映画ではなく小説を書くのか、ということについても考えられる。二次元や三次元のメディアをなぜ選ばないのか、これにちゃんと答えられる文字書き、意外とあんまり見ない。
あとどう書くのかって視点は文学的にも全然ある視点の持ち方なので、そんなに恥ずかしく思うこともないと思う。[...]
創作論にも面白いものと面白くないものとがあるのは当たり前。創作論を語るのがダサいというか、つまんない創作論を語るのはそりゃまあ滑ってんだからダサい。

(随所に見える「俺はお前らとは違う」というアピール)

「恥ずかしいけど面白いからやっています。」というのは正直マウントをとっていて、「俺にとって創作論には意義があるから恥ずかしくても創作論をやる」というのは「創作論に単なる創作Tips以上の意義を見出せないお前の創作論は恥ずかしい」ということ。「俺にとって意義がある、面白さを提示できる」というのがマッチョな態度にすぎず、面白いよ〜〜と他人にものを語る姿勢ではない。
だから読んでてムカつく。

どうするべきだったか

これ、卑屈な下心から記事を書かずに、「ダサいって思う人もいるけどこんな面白さがあるよ」と書いてしまえば良かったと思う。好きなんだから。こういうすり寄り方されてもされる方も困るだろうと思う。
この、自分の後ろぐらさを把握できずに他人にかぶせてしまう、みたいなのはやりがちなので気をつけたいなと思った。素直がいちばん。

再び「最後に」

というわけで、謝るべき人には直に謝ったんだけど、他にも嫌な気分になった人がいたら本当すみませんでした。
創作論とか脚本術とかの界隈、創作界隈と近いようで遠いから妙なスタンスを取りがちなんだけど、何か作るのが好きな人がいるように分析するのが好きな人がいるのも自然なことだと思う。外から見たら「なんで?」ってなるかもだけど、そもそも創作だって世間から見たら「なんで?」って趣味だ。コアな趣味持ってると外から疑問投げられがちなのは残念ながらよくあるので、まあ元気に好きなことをやっていきましょうと思いました。

一旦以上。

2020年の4月に読んだ本

おつです。森田です。
2020年も5月になったので、前月に読んだ本の振り返りでもしようかと思います。

読んだ本

『オービタル・クラウド藤井太洋

SF。
サイエンスフィクションっていうよりテクノロジー小説って感じが強かった。kindleで上巻だけ読んだんだけど、物語に入るまでが遅くて、けど演出と視点の持たせ方で技巧的に序盤をつないでいたのが印象的だった。下巻も読もうかな〜〜と思ったんだけど他に読みたい本があったのでやめました。

オービタル・クラウド

『日本の同時代小説』斎藤美奈子

文学史
1960年代~2010年代までの国内文学の流れを時代背景含めで解説してくれていた。これはかなり面白くて、これを読んで以降ちょっと文学系の本に手を出している。そういう意味でかなり意義のある本だった。 また、作家の系譜を知ることができたり、自分がどういう作家の影響の下にあるのか考えられて、文体について考えたりする際に役立った。

日本の同時代小説

『幕末ダウンタウン』吉森大祐

講談社小説現代長編新人賞受賞作。時代物。
幕末の京都を舞台に新撰組の男が漫才をやるまでの話。読みやすかったんだけど、その先どうなってしまうのかってのが読みたかった。面白かったんだけどね。

幕末ダウンタウン

『二匹』鹿島田真希

純文学。
鹿島田真希は芥川・三島・野間文芸全て受賞している純文三冠なんだよな。小学生の頃これを読んでめっちゃ面白かった思い出があり、今回読み直した。わけわからん話だったけど面白かった。白紙に戻そう拳闘士! とか。

二匹

『スイート・マイホーム』神津凛子

小説現代長編新人賞受賞作。ホラーサスペンス。 これはかなり完成度も高くて面白かった。序盤は鼻につく描写が多くてちょっとむかついていたんだが、すぐに面白くなってのめり込んだ。この小説を読んでサブプロットの役割を理解できた。

スイート・マイホーム

『名医が教える不眠症に打ち克つ本』内山真

不眠症の本。今書いてる小説に使えそうだったので目を通した。年取ると睡眠時間は少なくなる(日中に体力を使えなくなるから)ので、無理に寝ようとすると不眠になるらしい。20代でも7時間寝れれば良いとかなんとか。普通に参考になった。

名医が教える不眠症に打ち克つ本

ピエタとトランジ』藤野可織

ジュブナイルシスターフッドもの?
『爪と目』の藤野さんがエンタメ方面でこういうのを書いているってのが意外だった。爪と目読んだことないけど読んでみたくなった。
内容も最近のミステリーって感じで面白かったです。

ピエタとトランジ

『アウトラインから書く小説再入門』KMワインランド

プロットの立て方本。
『工学的ストーリー創作入門』の補完的な内容になっていて読む意義があった。今書いているやつが結構プロットをガッチリ作ったやつだったので、あー同じようなやり方で書いている人がいるんだなーと思った。

アウトラインから書く小説再入門

『ニッポンの文学』佐々木敦

文学史
ツイッタでフォローしてる人からこの人いいですよと教えてもらって購入した。SFとかミステリの歴史がまとまっててそこが嬉しかった。あと海外文学がどう日本の作家に影響を及ぼしたのか、みたいなところも書いてあり、系譜を遡るのに役立った。

ニッポンの文学

今読んでるもの

今は『「私」をつくる 近代小説の試み』と『最後の御大将 平重衡 義経が最も恐れた男』を読んでます。文学史を読んでるうちに口承文芸に興味がいって、平家物語を読む前に歴史小説でおさらいしとこと思った次第。
韓国ドラマの『キングダム』っていうのが面白くて、それは韓国ゾンビ時代劇なんですよね、そういうのを平家物語でやりたいなと思いました。いつか。
あと『イテウォンクラス』って韓国ドラマもみた。第一話のジャンルをぶん回す感じが凄かった。
それとそれと脚本術系の本が5冊くらい積まれてるのでそれも消化したい。『「私」をつくる』が終わったらそっちかなと思ってます。けど今は文章のことを考えたいので『日本の小説技術史』とかを読むかも。速読術を身につけたいもんだ。

以上。

物語を貫き、構成する要素:内的問題と外的問題について

お疲れ様です。森田です。
脚本術で扱う概念について、簡単に整理します。

脚本術の概念について整理する記事を書こうと思ったときに、まあ三幕構成とかを最初にやるのがいいかなとも思ったんだけど、理論的な基礎がどこかと考えたとき一番の基礎は内的問題と外的問題だろうなと思ったのでそこを書く。

(ちなみに三幕構成とかのことを知ってる人の方が本記事を楽しめるってのもまた真実。三幕構成についてはwikipediaの三幕構成の記事を読むとかするとまあ分かる。)

ちなみに内的問題と外的問題という概念はあくまで森田の勝手に考えているものだと思って欲しい。今から書くことについて、ジャストそのままで扱っている脚本術の書籍はない。似たことがロバート・マッキー『ストーリー』に書いてあるが、若干違う。

全体構成の中での「内的問題と外的問題」

内的問題と外的問題という概念が出てきている書籍のひとつに、『ハリウッド脚本術-プロになるためのワークショップ101』 ニール・D・ヒックス著 がある。ここではそれぞれを「内的な欲求」「外的な目的」と呼び、このように定義している。

まず「内的な欲求」について。

[...]確立されつつあるのが主人公の内的な欲求である。[...]個人的なドラマでは、この失われた特質とは、思いやり、寛容、場合によっては自立と言ったようなもので[...] (『ハリウッド脚本術-プロになるためのワークショップ101』P28)

これ要領を得ないですね。要するに、キャラクターがどんな内面的な変化を望んでいるか、ということ。別の書籍とかだと「キャラクターのアーク」とか「霊的な問題」とかって呼ばれることが多い。

続いて「外的な目的」について。

主人公は人生をより良くするためにその目的を達成したいのである。人生をより良くするということは、特別な恋を見つけることかもしれないし、誰かを危険から救出することかもしれないし、[...]それが何であれ、主人公は問題の答えとして外的な目的を定め、観客である我々はその目的を、キッカケとなる事件が確立した劇的葛藤を解決するために、主人公が達成しなければならないものとして認識するのである。
(『ハリウッド脚本術-プロになるためのワークショップ101』P30)

これはまだ分かる。物語の中で主人公が実際に行動して得ようとするもののことだ。これは「セントラル・プロブレム」とか「中心的な問題」とか「触れられる問題」など、まあいろんな呼び名がある。

なぜこの二つを最初に紹介したかというと、こと現代の物語において、この二つは物語の脊柱的な役割をしているからだ。大概の物語では、主人公が実際に取り組む問題について描かれるし、それを通してどんな変化がもたらされるのか、という点についても描かれる。

例えば『NARUTO』だったら「里のみんなを守る」が外的問題で、「みんなに認められる忍び(=火影)になる」というのが内的問題だと思う。ここはまあ色々と解釈が可能(とりわけ漫画だと)だが、とにかくそういう二つの大きな流れがあるというのは理解してもらえると思う。

物語の最小単位としての「内的問題と外的問題」

ここでひとつ考えてもらいたいポイントなんだが、『NARUTO』がもし第一話で打ち切りになっていたとしたらその内的問題と外的問題はなんだっただろうか。
[第1話]NARUTO—ナルト—

ここでのナルトの外的問題は試験に合格することで、内的問題は誰かから認められることだ。
まあつまり、第一話の中でも構成が見て取れそうだ。そしてさらにこれを推し進めてみるとどうだろうか。ある特定の一コマにも外的問題と内的問題はあるだろうか。

ここで俺が話したいのは、どんな瞬間を切り取ってもナルトには外的問題と内的問題があってすごいよね、という技巧的な話ではなくて、どんなシーンを切り取ろうが物語には外的問題と内的問題が潜むとか、私たちは内的問題と外的問題を無意識に整理することによっていくつかの事象を物語として把握するということだ。

これ若干論理の飛躍があるので前後しつつも説明させて欲しいんだけど、まず、内的問題と外的問題を再定義する。

まず、外的問題について。
根本的なところからだけど、私たちがある事象を外的問題だと捉えるには必要なものがある。具体例でいうと、ある喫茶店が潰れそうになっているとき、その喫茶店の店主は「潰れないように売り上げを伸ばす」という行動に出る。それに対してその店に金を貸している極悪地銀の職員は「債権が焦げ付かないうちに金を回収する」という行動に出るかもしれない。はたまた1ヶ月前にその喫茶店の近くに引っ越してきた住民は「潰れちゃうんだーと思って夕飯の話のネタにする」という行動に移るかもしれない。

つまり、ある特定の事象を外的問題だと捉えさせているのはキャラクターに他ならない。特定の動機を持ったキャラクターが外的問題を見出して行動に移る。

次に内的問題について。
あるキャラクターが勇気を持ちたいと思うために必要なものはなんだろうか。具体例でいうと「好きな人が引っ越してしまい二度と会えなくなる状況」だとか「敵地奥深くに味方が取り残されてしまった状況」だとかまあ色々ある。

つまりここではある特定の事象がキャラクターの内的問題を喚起している。特定の状況がキャラクターに変化を求めているわけだ。

で、勘のいい人は気がついたと思うが、これは相補的である。

ある特定の事象下でキャラクターは特定の動機を抱く。するとその動機は、キャラクターの周囲に行動すべき課題を見出させる。そこでキャラクターが行動すると、行動の結果変化した事象がさらにキャラクターに動機を抱かせる。

ここに、動機と行為の相補的な関係が見えてくる。つまり、動機を持っているからこそどんな行動をすればいいのか明確になり、行動したからこそその行動の主がどんな動機を持っているのか明確に示されるという関係だ。このようにして、動機と行為はお互いを強化しながら連なっていく。

これはそのままキャラクターとストーリーの相補的な関係、内的問題と外的問題の相補的な関係だとも言える。キャラクターがしっかりと立っていれば、ストーリーもまたキャラクターにとって必然のものになるだろう。またストーリーが強烈であれば、キャラクターはそこで試され強く成長するだろう。

ロバート・マッキー著『ストーリー』ではこれを別の視点から捉えてこう記している。ちょっと前振りから書き起こすので長くなるが読んでみて欲しい。

ストーリーの本質とはなんだろうか。
他の芸術分野なら答えは明らかだ。作曲家は楽器と音符で曲を奏でる。[...]すべての芸術家は作品の素となるものに手を触れることができるが、作家だけは別だ。というのも、ストーリーの核にあるのは「本質」だからだ。[...]
「でも、ことばがあるじゃないか。[...]作家にとっての原材料は言語だろ」[...]言語はストーリーテリングの数ある媒体のひとつにすぎない。ことばよりもはるかに重大なものが、ストーリーの奥底に息づいている。
(ロバート・マッキー著『ストーリー』 P164, 165)

本章の冒頭で投げかけた問いの答えはもうわかっただろう。ストーリーの本質は言葉ではない。机上で思い描いた人生のイメージや感情を表現するためには、明晰な文章でないといけないが、ことばは目的ではなく、手段であり媒体だ。ストーリーの本質は、ある人がアクションを起こして、その次に起こると思っていることと、実際に起こることのあいだに生じるギャップ、つまり予測と結果、可能性と必然性の間の隔たりだ
(ロバート・マッキー著『ストーリー』 P217)

ここではストーリーの本質がギャップであると言っている。ただそのギャップがどのように連なっていくのかという点に注目すると、そこには予測し、行動し、結果が得られるという連鎖があると分かる。デカい口をたたくようだが、マッキーの論と先に自分があげた「動機と行為の相補的な関係」は、物語がどのように連鎖するのか、という視点をどの断面で切り取っているのかの違いでしかない。

また、この動機と行為の相補的な関係は、抜群に面白い物語の中だけにあるわけではない。この章の冒頭にも書いたように、この構造は「どんなシーンを切り取ろうが物語には外的問題と内的問題が潜」み、「私たちは内的問題と外的問題を無意識に整理することによっていくつかの事象を物語として把握する」。

まあ動機が行為を導き出すという考えは、若干こう人間の理性を過信している嫌いもあるが、むしろそのように捉えてしまう、というのはありうる考え方だと思う。

例えば慶應義塾大学の前野教授が言及している「受動意識仮説」とかはそういう考え方だ。(確か、人間に意識なんてものはなくて、適当に動いているだけのものを脳が後から再編してそこに筋の通った意識があるかのように思わせているだけ、みたいな話だった気がする)

意識は幻想か?―「私」の謎を解く受動意識仮説 - YouTube

若干話はずれたが、そんな感じに、物語の最小単位としての外的問題と内的問題があり、それが連なることで物語が出来上がっているんじゃないか、と森田は考えている。

まあ割と突っ込みどころもあるかも知んないんですけど、こんな感じです。以上。

創作論の書籍47冊と本当にオススメの3冊を紹介する

こんにちは、森田と申します。

この記事では森田が知っている47冊の創作論関連の書籍について紹介します。なんか50冊近く出すとたくさん読んだ自慢みたいになっちゃうので心苦しいのですが、保坂和志もテクニックのこと学ぶやつはクソ全員カス(大略)と言っているのでアホの戯言として許してください。

はじめに本当にオススメできる3冊から。

本当にオススメする創作術関連書籍

  1. 『SAVE THE CAT三部作』ブレイク・スナイダー
    SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術
    10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術 SAVE THE CATの法則
    SAVE THE CATの逆襲 書くことをあきらめないための脚本術
    言わずと知れた「SAVE THE CAT」シリーズ。物語をきれいにつくりたいなら、このシリーズの第1巻は必読。全体構成以外の小ネタでも実践的なものが載っていたりする。
    続巻の2冊はジャンルや脚本執筆にあたっての様々なトラブルついて書かれている。自分はこの本を購入した当時は全体構成や物語の最小単位に興味があったのでさらっとしか読まなかった。
    小説バージョンのものもあるが、こちらは未読。
    SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く

  2. 『ストーリー』ロバート・マッキー
    ストーリー
    名著中の名著。
    脚本術の理論的な書籍としてはこれが一番良い。日本では2018年に出版されたが、本国のアメリカでは『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと-シド・フィールドの脚本術』と同時期に発表されている。
    脚本術は3幕構成やビートシートといった全体構成の理論が注目されがちだが、本書は物語の最小単位はなんなのか? という視点など、より本質的な理論について書かれている。
    ある程度脚本術の本を読んでいる人でこれを読んでいないなら絶対に読んで欲しい。

  3. 『「感情」から書く脚本術』カール・イグレシアス
    「感情」から書く脚本術
    これも名著中の名著。
    理論的な内容から離れて、脚本技法の実際について最も広汎に、深くまとめられている。最高だった。脚本術のフィールドワークであり参考文献、これ読んでる人とは酒が飲める。
    これは小説を実際に書き、細かい演出技法などに興味が出てきたらより一層楽しめる書籍。

その他オススメの書籍

読んで面白かったものにはオススメと書いてあります。また読みかけ・未読のものについてはその旨書いてあります。

国内の書籍

  1. ライトノベルを書きたい人の本』榎本秋
    ライトノベルを書きたい人の本
    初心者向けの本。
    薄く広く小説の初心者向けに書かれており本当に初心者の人はこういう本を読んで小説の常識(三点リーダーは複数とか)を身につけると良いと思う。

  2. 『ミステリーの書き方』日本推理作家協会
    ミステリーの書き方
    国内ミステリ作家のテクニックが大量に書かれている。読みやすく、多方面の視点からミステリーについて語られておりかなり面白かった。乙一が全体構成について言及している。

  3. 『小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない』大沢在昌
    小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない
    大衆小説の大御所・大沢在昌が小説講座を開き、その様子を書籍にしたもの。講座内で語られる小説への姿勢が意識高く、自分の甘さに気付ける。

  4. 『超簡単!売れるストーリー&キャラクターの作り方』沼田やすひろ
    超簡単!売れるストーリー&キャラクターの作り方
    ストーリーを13のフェーズに分割する「13フェイズ理論」と作品のジャンルを忘れさせない要素「リマインダー」、キャラクターの8つの役割について書いてある。元々東京工業大学の金子先生が研究していた内容を筆者がアレンジしている。
    「13フェイズ理論」は『SAVE THE CATの法則』で紹介されているビートシートの別解釈みたいなところがあり、セーブザキャットを読んでピンと来なかった人がもしかしたらこっちでなるほどと思えるかもしれない。ただ本質的にはセーブザキャットと同じ。
    また、筆者が元の理論を拡大解釈しすぎている嫌いがあり、リマインダー理論はもはや訳が分からなくなっている。定義のまともにされていないリマインダーという言葉を使って「リマインダーになっているからこのシーンは面白い」と延々語っており、論の展開のさせ方に不信感が残った。
    また、絶版になっているが元ネタになっている金子先生の書籍があるはずなので、読める人はそちらを読んでみて欲しい。

  5. 『最低限のプロットと中だるみしない第二幕』黒部ポルカ
    最低限のプロットと中だるみしない第二幕
    一般の方が出している書籍だがかなり良い。読みながらこの人は俺より物語について理解している......と震えた。
    どうやって物語を成り立たせていくのかについて実践的にまとめている。BLを例題に使ったりすることもあった気がするので、そういうのが気にならない方はぜひ一度読んでみて欲しい。Kindle Unlimitedで無料。
    続刊もある。
    ストーリーとしてのキャラクター 最低限のプロット

海外の脚本術書籍

  1. 『ハリウッド脚本術 プロになるためのワークショップ101』ニール・D・ヒックス
    ハリウッド脚本術―プロになるためのワークショップ101
    翻訳がイマイチだとAmazonで酷評されている。ただ、はじめて読んだ脚本術の本なので上げておいた。脚本術の基本的な概念はこの本で学んだ。
    地元の本屋で取り寄せをしてもらったはじめての本でもあり、宿題とかやらずにずっと読んでたので、親から読むなと怒られた記憶がある。

  2. シド・フィールドの三部作
    映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと-シド・フィールドの脚本術
    素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術
    最高の映画を書くためにあなたが解決しなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術
    脚本術のマイルストーンで、三幕構成というのが提唱されたのはこの本だったはず。まずこれを読む、というのは良いチョイスだと思う。第1巻は必読。

  3. 『工学的ストーリー創作入門』ラリー・ブルックス
    工学的ストーリー創作入門
    小説の技法をいくつかに分類しそれぞれについて解説している。
    第一章の「コンセプト」が死ぬほど曖昧な表現で書かれており、こりゃダメか......? と思ったが、構成の章がよくて、初心者もこれなら書けると思えそう。また、キャラクターについて「三次元で理解する」というのも面白い視点。
    コンセプトについては次の『アウトラインから書く小説再入門』が補足的な内容になっている。
    また、同じ著者のもので『物語を書く人のための推敲入門』というのもある。推敲作業に重点をおいたものはこれ以外にあまりみたことがないのでピンポイントで悩んでいる人はこちらも読んでみると良いかも。『工学的ストーリー創作入門』を前提にしているっぽい。

  4. 『アウトラインから書く小説再入門』K.M. ワイランド
    アウトラインから書く小説再入門
    プロットをどうやって書くのか? について書かれている。
    プレミス(コンセプトとほぼ同義)についての項目がよかった。『工学的ストーリー創作入門』の補助としても良い。

  5. 『ダイアローグ』ロバート・マッキー
    ダイアローグ
    未読。マッキーが会話について書いている。読みたい読みたいと思って読めていない。

  6. 『ストーリーの解剖学 マスターショット』ジョン・トゥルービー
    ストーリーの解剖学 マスターショット
    未読。辞書みたいに分厚い。評判良し。

  7. 『物語のひねり方 読者を飽きさせないプロット創作入門』ジェーン・K・クリーランド
    物語のひねり方 読者を飽きさせないプロット創作入門
    未読。進展を感じさせるようなプロットポイントの作り方が多分書いてある。中盤に何も起こせない人とかが買うといいんじゃないかと思う。『Mastering Suspense, Structure, & Plot』の著者らしい。

異色だが面白かったもの

  1. 『らくごDE枝雀』桂枝雀
    らくごDE枝雀
    落語における構造論を枝雀師匠が書いている。「フリとオチ」や「緊張と緩和」の技法を日本の芸能がどう利用しているかについて書かれている。これは普通にめっちゃ勉強になった。

  2. 荒木飛呂彦の超偏愛! 映画の掟』荒木飛呂彦
    荒木飛呂彦の超偏愛! 映画の掟
    良いサスペンスの5条件というのが示されており、それが面白い。また、荒木飛呂彦先生がどんなものに面白さを感じながら映画をみているのか、というのがだいぶ面白い。新書で短いし印象に残っている。

  3. 『日本語の作文技術』本田勝一
    日本語の作文技術
    一度は読んだ方が良い。どんな文章が読みやすいのか、文法的な観点から解説している。これを基礎として自分の文体を固めれば良いと思う。

  4. 『アイデアのつくり方』ジェームス・W・ヤング
    アイデアのつくり方
    これも名著。
    タイトル通りアイデアの出し方について書かれている。だいぶ短いのでさくっと読める。

  5. 『イシューからはじめよ』安宅和人
    イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」
    ビジネス本。名著。
    何かを解決するとき、イシュー(問いかけ)をまず明確にせよ、という本。物語も同様で、最初に読者に問いかけが提供され、それが終盤解決される。「問いと答え」という考え方は十分小説に活かせる。
    また、人が何かを発見したと思えるにはどんな構造があるのかについて書かれたページがあり、これはそのまま小説の面白さとして流用できる。

文学・学術的なもの

  1. 『書きあぐねている人のための小説入門』保坂和志
    書きあぐねている人のための小説入門
    脚本術とは対岸にいるような作家が書いた小説入門。「テクニックのこと学ぶやつはクソ全員カス」と言っているのはこの本。他人の真似をしている暇があったら自分にとっての小説が何なのか真面目に考えなさいというようなことが書いてあり、これはこれでとても重要な視点なので、脚本術に疲れたら読んでみると良いと思う。

  2. 『物語の体操 -みるみる小説が書ける6つのレッスン-』大塚英志
    物語の体操―みるみる小説が書ける6つのレッスン
    これも有名な本。タロットカードを使った創作術がすごく印象的だった。国内の書籍ではよく言及されるので押さえておいても良さそう。

  3. 『日本の同時代小説』斎藤 美奈子
    日本の同時代小説
    1960年代から2010年代までの日本の小説について、社会的な背景とともに紹介している。今まで読んできた小説がどんな時代の流れの中にあるのか理解でき、また読みたい小説の枠もかなり広がるので、純文の公募を狙ってる人にはオススメ。

  4. 『物語の構造分析』ロラン・バルト
    物語の構造分析
    未読。名著なので押さえておきたくて最近買った。

特にオススメはしないが紹介するもの

  1. ライトノベル・ゲームで使えるオリジナリティあふれるストーリー作りのためのシナリオ事典100』榎本秋
    ライトノベル・ゲームで使えるオリジナリティあふれるストーリー作りのためのシナリオ事典100
    シナリオのテンプレート集。買ったはいいがひととおり読んだだけだった。

  2. ライトノベルの書き方講座』冲方丁
    新装版-冲方丁のライトノベルの書き方講座
    冲方丁の創作ノートが載っていた記憶がある。

  3. 『物語工学論 キャラクターのつくり方』新城カズマ
    物語工学論 キャラクターのつくり方
    キャラクターのタイプについての本。あんまり内容を覚えていないけど、同時に買った『15×24新城カズマ がすごい面白かった。

  4. 『ベストセラー小説の書き方』ディーン・R-クーンツ
    ベストセラー小説の書き方
    小説をどう書くかについて、短い章立てで色々と書かれている。いろんなところで紹介されている名著(ただし自分はあんまり記憶に残っていない)。

  5. 『書くことについて』スティーヴン・キング
    書くことについて
    スティーブン・キングの自伝的な本。参考にするところはあまりないと思うが読み物としてはよかった。

  6. 『ゲームシナリオの書き方 第2版 基礎から学ぶキャラクター・構成・テキストの秘訣』佐々木 智広
    ゲームシナリオの書き方 第2版 基礎から学ぶキャラクター・構成・テキストの秘訣
    読んだけど全く覚えていない。ゲームを作りたい人向け。

  7. 『シナリオの基礎技術』新井一
    シナリオの基礎技術
    大学の講義で買わされたのだが詰まらなくて途中で抜けてしまった。ただ本書の評判は良い。

  8. 『なぜあなたは論文が書けないのか』佐藤雅昭
    なぜあなたは論文が書けないのか
    論文の書き方本。論文にも構成があり、それが小説に活かせるのではないかと思い読んだ。内容はあまり覚えていない。

  9. 『脚本を書くための101の習慣』カール・イグレシアス
    脚本を書くための101の習慣
    読みかけ。22人の作家にインタビューし、どうやって小説を書いているのかまとめたもの。具体的なテクニックというより、習慣的なもの。読み物的に楽しめる。

  10. 『サブテキストで書く脚本術 (映画の行間には何が潜んでいるのか) 』リンダ・シーガー
    サブテキストで書く脚本術 (映画の行間には何が潜んでいるのか)
    未読。サブテキスト単独についてまとめられている事例集。理論的にまとまっているわけではないらしい。

  11. 『新しい主人公の作り方-─アーキタイプとシンボルで生み出す脚本術』キム・ハドソン
    新しい主人公の作り方-─アーキタイプとシンボルで生み出す脚本術
    未読。昔買って読めていない。当時はキャラクターにあまり興味がなかったので。。

  12. 『Elements of Fiction Writing - Characters & Viewpoint: Proven advice and timeless techniques for creating compelling characters』Orson Scott Card
    Elements of Fiction Writing - Characters & Viewpoint: Proven advice and timeless techniques for creating compelling characters
    読みかけ。キャラクターの書き方について重点的に書かれた洋書。ダン・ブラウンがお勧めしていた。

  13. 『Mastering Suspense, Structure, and Plot: How to Write Gripping Stories That Keep Readers on the Edge of Their Seats』Kindle Edition
    Mastering Suspense, Structure, and Plot: How to Write Gripping Stories That Keep Readers on the Edge of Their Seats
    読みかけ。サスペンスの構成についての書籍。こちらもダン・ブラウンお勧めの書籍。

  14. 『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング できるビジネスシリーズ』唐木 元
    新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング できるビジネスシリーズ
    読みかけ。インターネット時代における商業的な文章の書き方。読みやすさをどう作るか? という動機で購入した。

  15. 詩学アリストテレス
    詩学
    未読。三幕構成という言葉自体はここからだったような。物語論のハシリはこれなので一応読みたい。

  16. 『日本小説技術史』渡部直己
    日本小説技術史
    卒論で少しだけ読んだ。曲亭馬琴の創作技法 『稗史七則』についての言及がある。

最後に

以上です。

このほかにオススメの書籍あったらコメントやtwitter(@subwaypkpk)で教えてもらえると嬉しいです。また、他人の小説を読んで脚本術の観点からワチャワチャ語るのも好きなので、感想欲しいとか創作の話に付き合ってよって人は声かけてください。

書くことにまつわる悩みの整理

おつです。日記。

書くことにまつわる悩みの整理

先月、小説のプロットができた。多分三万字以上になる。
で、この小説の書く意義というか、良いなと思ってるのは、この小説はパッとワンアイデアあって作った小説ではなくて、小説家を主人公にしてなんか一本かこう、くらいのノリで考え始めて、結構かっちりしたプロットまで作り上げているということだ。これの何が嬉しいかというと、これがある程度の面白さになるのであれば、俺はこのレベルの小説を何本でもかけるだろうなと思えるところ。プロットも割と納得できるレベルで作れたので、自分自身けっこう自信になってる。

んだが、最近ちょっと自信喪失している。
まあ小説を書くこととself-doubtはいつでもセットなのでしょうがないっちゃしょうがないんだが、ちょっとこの感覚をぼんやりと持ったままに小説に向き合うと疲れてしまうのでここに書いて供養する。

なんで自信喪失してんのかなーと思って理由をいくつか考える。

  1. 妻の小説がめっちゃ面白かった
    もうひとつめはこれ。もう本当に面白かった。ので、くっそ焦ってる。
    妻が今度の五大新人賞に送るそうなので原稿を読ませてもらったんだがそれはもう面白かった。読んでその後二日くらい、その小説のことがぼんやりと頭に残っていた。そういう経験って市販の小説を読んでいてもそんなにないから、本当に面白かった。
    妻は俺と同い年で、似たような経験をここ5年くらいはしてきているのに、実力の違いを見せつけられて徐々に落ち込んできている。
    あとインターネットでも上手い人をたくさん見てしまい、俺なんて......!! という気持ち。アホか。
  2. 本文を書く作業に入った(短所ばかりに目がいく)
    小説のプロットを書き終えて、今本文を書いている。
    俺は昔から遅筆なので本文を書くというのはストレスフル。そして、ここ5年くらいは小説を書いていなかったので文章がもう、それはそれは下手。。元々別にうまくはなかったと思うけど、つら......となってる。
    しっくりくる文章がかけないので、小説を書くたびに自信喪失していて、報酬体系がうまく働いていない。
  3. プロットを書く能力?(長所を見失った)
    プロットだっていうてもそんなに面白くないんじゃないか。俺には才能がクソほどないのでは......? と思ってる。小説に才能があるとすればそれは書き続ける能力のこと、情熱を持ち続けられること、そう思いつつも疑念がわく。プロットもダメだったらもう俺には何にもないじゃないですか! という気持ちになってくる。

こんな感じかなざっと。

なので、対策。

  1. 才能
    これはもう努力するしかない。その点に関して俺はできる。書き続けられるし正しい努力もできる。常に小説のことを考えて生きている。その積み重ねはある。
    あとまあ下を見たらいくらでも俺より面白くないやつがいるし、アホに限って才能がない〜〜とか言うんだから才能のことについてウダウダ言うのをやめる。それよか書く。ハイハイ。
  2. 苦手の克服:文体
    文章を書くのが遅いってのは多分自分のスタイルが固まってないから。ずっと筆折ってたんだからしょうがない。固めて、学んで、どういう筆の運び方があるのか身につけていくしかない。これも努力。それは得意なことだ。
  3. 長所を認める:安定性
    安定してる俺は。いつでも秀作がかける。これは俺の誇っていいこと。破綻しないまとまった小説を俺は絶対かける。息吸うようにできる。だからあとは武器を身につけるだけだ。社会的問題を入れ込むとか。頑張ろう。

こんなもん。日々頑張ります。。

脚本術のフィールドワーク:『「感情」から書く脚本術』を読み終えて

おつです。おひさしぶりの更新。

今日、『「感情」から書く脚本術』を読み終えた。読み始めてすぐにも思ったがこの本は脚本術における先行研究みたいな、かなり包括的な議論がされている書籍だった。物語を作るという行為に置ける、幅広い技術的な問題意識を扱っているし、細かい演出面についても書いている。邦訳されている脚本術の書籍は基本的に入門的なレベルに落ち着くものが多い中、これだけ包括的な議論のできている書籍は他にないと思う。これ一冊読んでおけば本当に幅広く知識がつく。『ストーリー』が理論的なバイブルだとすれば、『「感情」から書く脚本術』は実例集、辞書、フィールドワークみたいな感じがある。

で、そういう本だったので、今まで自分の持たなかった視点がいくつか得られた。

前提:今までの問題意識

前提として今まで自分の問題意識としてあったものを整理しておきたいのだが、

  1. 内的問題と外的問題
    これは俺の卒論の内容。
    全体構成が内的問題と外的問題から成り立ち、それは最小単位のドラマにおいては動機と行為、物語の要素としてはキャラクターとストーリーに代表される、という考え。
    内的問題と外的問題という言葉に全てが収斂しているのは気持ちが良いし、実際『ストーリー』などを読む限りいい線いってるとは思う。ただ、若干定義が怪しい。
  2. 伏線の技術
    これも学生時代に考えたやつ。伏線の分類をしたんだが、散逸してしまった。原因となる伏線、フックをかける伏線、埋められた伏線、気がつけば面白い伏線、的な分類だったような。。
  3. 使い勝手の良い演出
    『沈黙』で遠藤周作が同じ演出を何度も使い回す、というのがあった。かつ、どれも結構面白かったので、演出は構造的な面においては別に同じでも全然良さげだなと思い、そういう使い勝手の良い演出のリストを作りたいな〜〜と思っていた。
  4. キャラクターの理論
    キャラクターをどう描くのか、というもの。サブテクストに注目してやっていた。けどこれを実作に活かそうとして失敗している。
  5. 得意なジャンル、テーマ、感情
    得意な、というかある程度絞って書こう、ということ。自分の好きなものがどれで、どういうものを書いていると楽しくやれるのか。ダンブラウン先生もprotect your processみたいなことを言っている。

『「感情」から〜』で得られた問題意識

  1. 読者の感情をどう揺さぶるのか
    これは俺がドラマとぼんやり呼んでいたものだが、これの内実がめちゃくちゃはっきりと書かれていた。今まではどういう仕組みでドラマが成り立つのか、ということばかり考えていたが、結局のところどう読者の心が動いたのかが問題。アホみたいな話だが、結果を意識しないとな〜〜ということを思った。
  2. キャラクター作りに関する整理された内容
    キャラクター作りのよくある例といえばキャラクターに100の質問、みたいなやつだが、本書はそれをフランケンシュタイン方式と呼び、それに代わる方式を紹介していた。キャラクターが物語の中でどういう役割を持つのか(おそらくそれはキャラクターのアークとしての役割や、生きた人間として読者の依代になるようなものだと思っているが)、という視点からキャラクターに必要な要素をまとめていた。本書を読む直前の問題意識がキャラクターだったので、この章はだいぶ唸った。
  3. コンセプト
    本書を読む前まで、コンセプトは結構適当に扱っていた。が、大切だな〜〜という当たり前のことを思えるようになった。本書を読む直前に『工学的ストーリー創作入門』を読んでおり、「コンセプトはWhat if? で言い換えられるもの」と説明を受け、訳が分からんと思っていたが、今ならほんまそれと言える。脚本術の内容で馬鹿らしいと思ったものはだいたい自分の知識が足りていない、俺の場合は。。
  4. 構成
    構成とコンセプトの繋がりを理解できた。たくさんのwhat if? があるということはそれだけプロットポイントを作れるということ。
  5. 場面、ト書き、台詞
    これは書いていく中でどうブラッシュアップしていくか、ということなんだが、今まで以上に改稿作業で頭を使えそうだなと思っている。また、既存の小説を読む際になぜ自分はここを面白く思ったのかメモするんだが、それが一層捗りそう。

最後に

本書を読み終えて、今まで読んだけど理解できていなかった視点について改めて考えてみたいという気持ちが出てきた。今まで適当に読み飛ばしていた内容も今ならわかる気がする。というわけで、すでに持っている脚本術関連の書籍をまた読み返したいな〜〜という気持ちです。

最後に、本書を出版してくださった社の方、翻訳家の方、もちろん著者さん、ありがとうございました。マジで良かったです〜〜〜!!! 巻末にも著者のメールアドレスが書いてあったので感想を送りたい。

以上。