親です。

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「物語の構成法は物語を単調にする」か?

「物語の構成法は物語を単調にする」という意見について、もう百万回くらい見てるんだけど、それに対してぼんやり抱える気持ちみたいなのをちゃんと書いてなかったなと思って、書いておく(もしかしたら過去に書いているかも知れんが...)

前提

言葉の定義をちょっとする。

「物語の構成法」とは何か?

物語の構成法とはなんのことか? たぶんこれは三幕構成のこと、もしかしたらBS2(『SAVE THE CATの法則』)やそれに類似した物語のテンプレートのことかなと思う。

「物語を単調にする」とは何か?

これは似通った話にしてしまう、ということかと思う。

すでにされている指摘

この「物語の構成法が物語を単調にする」という意見に対して指摘されているのは、それが浅い意見であり、構成が同じでも全く違った印象の物語にすることは可能だというもの。自分も基本的にそう思う。実際趣味として自分で書いていても、構成云々より演出の幅のなさの方が圧倒的に単調さを作っている。

とはいえ、似通ってしまうポイント

とはいえ、例えば「お話の中盤まで上手いこと行ってたのに、終盤に差し掛かったところで危機的な状況に陥ってしまう」というようなのは確かにいろんな物語にあって、これが支配的な状況ってのは若干だるいなとは思ったりする。

脚本の要請でそれまで感情移入してきたキャラクターたちが不自然にひどい目に遭う、みたいな展開にゲンナリするのは理解できる。最終的に解決されるとも分かってるし、予定調和な感もある。

この問題に対して、それは演出の問題であるとか、物語にのめり込んでいればそんなことは気にならないとか、そういう反論をしてみることも可能だけど、問題はそういう予定調和で単調なストーリーが目に付くということだよなあと思う。

実際そういう「上がって、下がって、上がる」型があって、構成法に寄りかかってしまった結果単調な話の作り方が生まれているのは確かだ。つまりこれは物語の構成法が便利な道具として使われており、創作者の怠慢を許しているのではないかとは思う。(自分ごときが実際に創作する人に対して怠慢を指摘できるとも思わないが...)

シンデレラ曲線と6つの原型

先ほど「上がって、下がって、上がる」型、という言葉を使ったが、こういう構成をシンデレラ型の構成と呼ぶ。これは他にもいろんな型があって「物語の作り方は6つしかないことがビッグデータ解析で判明 - MIT Technology Review」という記事ではこのように紹介されている。

『地下の国のアリス』(ルイス・キャロル)など、立身出世物語に見られる、感情値の「一定して継続的な上昇」型
ロミオとジュリエット』(ウィリアム・シェイクスピア)など、悲劇に見られる、感情値の「一定して継続的な下降」型
ヴォネガットが説明した穴の中の男の物語のような感情値の「下降から上昇」型
イカロス』(ギリシャ神話)など、感情値の「上昇から下降」型
『シンデレラ』(グリム童話等)など、感情値の「上昇⇒下降⇒上昇」型
オイディプス』(ギリシャ神話)など、感情値の「下降⇒上昇⇒下降」型
研究チームは、感情の弧とダウンロード数の相関関係を調べて、どの型の弧に人気があるのかも検証した。すると、最も人気が高いのは、イカロスとオイディプス型の物語と、複数の基本的な構成要素が順次使用された複雑な型の物語だとわかった。特に、2つの連続的な穴の中の男の弧を持つ物語と、シンデレラの弧の後に悲劇が続く物語が一番人気である、とチームは供述している。

で、例えばBS2で利用されたり他のいろんなテンプレートは大概がこの「2つの連続的な穴の中の男の弧を持つ物語と、シンデレラの弧の後に悲劇が続く物語」だったりする。三幕構成はそこまで縛ってないと思うが(三幕構成あんまり詳しくない)、つまり言いたいのは現代のエンタメでもっぱら使われているのはこれまで英語圏の人間が発見してきた物語の類型のうちの、ひとつでしかないということだ。

(これ組み合わせがOKなら全ての原型はアリスとロミジュリの組み合わせであるようにも思えるが。元の論文を読んでないので知らん)

まとめ

というわけで思ったのは、

  1. 構成が同じでも物語の印象はかなり違う
  2. むしろ演出が下手だと同じようなものになりがち
  3. 演出ができなくても構成があればそこそこ作れてしまうので、安易に同じようなものが生まれる土壌にはなってるのでは?
  4. 現代のテンプレートは偏ってるので、いまあるもの以外のテンプレートもメジャーになって欲しい

ということ。

最後に、プロジェクトグーテンベルク英語圏青空文庫)に入っている物語の感情曲線をプロットしているページのご紹介。すごいなあ。
hedonometer

以上!