親です。

読んだ本とかについて書いてます

2021.1に読んだ本とか

はい感想。

2021.1に読んだ本

『素晴らしき洞窟探検の世界』

洞窟探検家の吉田勝次さんの本。いま書いてる小説で洞窟のシーンがあるので読んだ。 まあ一応読んどくかー程度の気持ちで読み始めたんだけど、専門用語とか洞窟内での感覚の変化とかなかなか想像では分からないところが書かれていてよかったなと思う。洞窟探検家の思考とか、こういうことには気をつけてるとか、何度も洞窟に入ってる人じゃないと気付けないポイントが沢山あって良かった。
あとはねー、著者が何度か死にそうになってて妙にはらはらした。とにかくこう狭い穴に入って出られなくなる。それでも探検大好き、みたいに言ってるから、この人が痴呆症になったら介護者は大変だろうなあと思う。気がついたら用水路で全裸になってそう。

『化け者心中』

文政期の江戸で鬼による役者殺しがあり、その犯人を追うというもの。主人公は鳥売りで、バディ役を務めるのが引退した元女形、容疑者たちも一癖二癖ある人ばかりといった感じでとにかくキャラクターが立っていた。容疑者6人が集まって紹介されるシーンはほんとにキャラクターの混乱がなくてすごかった。
テーマ的にも人と鬼とはどうちがうのか?とまとまっていたし、そのテーマに沿った謎解きの運び方も良かった。あーあと地の文がやたら良かったな、キャラクターに似合う描写がうますぎる。

『カトク 過重労働撲滅特別対策班』

著者は『狭小邸宅』の新庄耕。この著者はブラック企業の描写がめっちゃうまい。あと地の文がものすごく読みやすい。
『狭小邸宅』は転落ものとしてはちゃめちゃに良かったが、本作は短編連作というか、短い話を集めた感じでひとつひとつ読みやすかった。ちょっと技巧的な話としては、第一話を消化不良で終わらせつつ最終話で回収するという手法がとられていて、こういう構成はいいなと思った。

『サーラレーオ』

引き続き新庄耕。群像で掲載された作品で、実際純文学っぽかった。あんまり筋らしいものもなくて主人公の姿を描いてる。前に読んだ『カトク』とかでも短編ひとつひとつで短いながら印象的なキャラクターを作るなあと思ってたけど、長編一本使って書く、ということもしててははあと思った。もともと転落ものがうまいと思ってたけど、これはピカレスクロマンと紹介されるだけあってかなり下層まで転落してる。
ざっくり内容を書いておくと、ヤクザものの主人公が日本で旧友とマリファナの生産をしていて、けどなんやかやあって警察に追われてしまい国外逃亡、タイに不法滞在しながらまたマリファナを売って糊口を凌ぐ、しかし一緒に住んでいる現地の女性の様子がおかしくなり、みたい感じ。
キャラクターを描くもの、といいつつもかなり構成がうまかったなと思う。前半は純粋に悪漢を描いていてほとんど主人公に肩入れできないんだけど、ちょうどお話の真ん中で初めて主人公の親族についての描写が入る。そこから主人公の描かれ方が多面的になっていき、いろんな面が見えてくる。旧友と再会して光が見えそうになるも、やっぱりそううまくはいかずに全てがぶち壊されてしまうのとか、ああ、とため息を漏らさずにいられないやるせなさがあった。
キャラクターが印象的、みたいに書いた『カトク』でもこういう構成は試されていて(カトクは労基署がブラック企業の悪い人を捕まえる話なんだけど)、悪役に当たる人を序盤は悪の面ばかり描きつつ、後半でその人の背景を描いて立体感を持たせるということをしている。キャラクターをどう描くか、というのは脚本術ではキャラクターのアークという言葉で議題として上がることが多いけど、こうやって前半後半とでかなり明確に書き分けているのはあまり記憶にない(実際はあるんだろうけど他にも)。こういうのは『工学的ストーリー創作入門』でキャラクターの三次元として紹介されていたりしていて、自分もほほーんと思っていたけど、こうやって活かしていくのかと膝を打った。自分はもっと短いシークエンスでこれをやるのかなと思っていたが、たしかにストーリー全体を使ってあげた方がエピソードの印象をまとめることができてそれぞれのエピソードが強くなる。それは物語の停滞を防ぐ意味にもなる。ハハー勉強になりました。面白いですね、小説って。

『ニューカルマ』

新庄耕。たぶん『狭小邸宅』好きな人なら好き。新庄耕の真骨頂ってかんじの展開のさせ方で、かつ『狭小邸宅』のエンディングからもうひとつ転調させた感じになっている。新庄耕の作品はどこまでも転落していく感じがほんとうにいい。主人公は転落しながらも自分のやっていることにどうにか希望を見出そうとするんだけど、そのなかでまた絶望させられたりして、それがもうね、読んでても少し虚無感を抱いてしまった。
このかんじ、わりと韓国映画に近いなとも思っていて、だから新庄耕好きなんだろうなあと思う。新庄耕のノリと、あとコメディをおれはできるようになりたい。前半はコメディ、後半は新庄耕みたいなことをして行きたい。

清洲会議

信長の死の瞬間か清洲会議の終わりまで、織田家家臣たちが後継者を選ぶために駆け引きする様子が描かれている。脚本家だからか、地の文はほぼなく、日時と状況を示す一文が各章のあたまにつく感じの作りだった。コメディを読みたいな〜と思って読んだんだけど、別に笑えるとは思わなくて、キャラクターが立ってたな程度に思った。滑稽なキャラクターとして織田家次男の信雄がいて、妙に町田康っぽい語りだった。上の世代だとこういう人がわりといたりしたのかな、と思うなどした。

『肉食の思想』

比較文化的な?感じに日本と欧米の文化を比べていく的な本。それが食事のスタイルを発端に自由平等の思想まで含めて語り始めるのが面白い。
最初はヨーロッパで畜産と肉食がされ日本ではそれがなされなかった理由を気候面から説明しており、面白かった。さらにその家畜への態度が動物愛護のはなしにつながったり、差別意識の問題や思想的に異なる相手への態度にまで影響しているのではないかと論じられていて、まあ正直それは推測の域を出ないのではと思うところもあったけど、全体として面白い本だった。高温多湿の日本では米を育てることが可能で、かつ米は少ない土地でめっちゃ獲れる&連作可能であったため、土地と人の繋がりが強くなり先祖信仰が生まれるとかは面白い。ヨーロッパは休耕地を作りながら麦の生産をし、さらにはそこに家畜を放牧するための広い土地を用意しなければならないとなると村単位で耕地を管理する必要が出てくるため、先祖代々の土地みたいな感覚が薄れるらしい。なるほど。

『宇喜多の捨て嫁』

めっちゃ面白かった。描いているのは宇喜多直家の生涯なんだけど、つくりとしては宇喜多直家とその周囲の人々に視点を散らばらせての連作短編。戦国の梟雄として名高い宇喜多直家らしくピカレスクものになっているんだけど、しかし色んな視点で描かれることで何が悪とも言い難い、あるのは信念だけみたいな、そんな感じになってる。
あと、ミステリーというか、思いもよらぬ伏線の貼り方をしていて驚かされるところもあって、全編通して面白く読めた。
あとはなんだろ、連作短編で視点人物を5人くらい用意しながら、それぞれにキャラクター付けをちゃんとされていたのがよいなーとか、作品を通して使われる小物があったりってのも良かったなーとか、あとなんすかね。無想の抜刀術はかっこよかった。ラストも良かったし。あと視点人物への圧の掛け方って面で「匂い」とかまあオーソドックスだけど戦国らしい腹の読み合い探り合いだとか。
そんなかんじすかね。ほんとに面白かったのかな?面白かったんですけどね。おしまい。

天久鷹央の推理カルテ

医療知識自体は面白かったんだけど、ラノベっぽいキャラクター造形で気の狂った母親が出てくるから藁人形論法って感じで嫌だった。母親相手にしか強い態度に出られないのは読んでてキツい。と、いいつつこれかなり売れてるらしいので、ふつうにドラマとしては面白いんだと思う。おれはダメだったというだけ。高校生のころの俺なら喜んで読んでたかもしれない。
まあでもなんというか、自分のダメなものが分かったのは良い。この本みたいな女性蔑視をせず、かつライトにキャラクターっぽく読めるものってどんな小説になるんだろう。『ゴールデンカムイ』とかはそういう意味で次世代っぽい漫画だと言われてきたし、自分も好きなのでなにか参考にしたいが。。

『これは経費で落ちません!』

作者の青木祐子さんはもともとコバルト文庫で書いてた人らしく、文章が軽くて読みやすい。あと、地の文でキャラクターの解像度を上げる作業みたいなのをよくやっている。たとえばこの人のこんな特徴からこんなことが読み取れるとか、何気ない一言からキャラクターの意図を読み取るとか。こういうのって男性向けラノベでも良くある手法で、たとえば昔のラノベだけど『狼と香辛料』とかはほぼ全編ヒロインの行動を読むことで読ませてる節がある。そういうのって小さな謎解きみたいだし、キャラクターを理解することって他人を把握してやったみたいな暴力的な快楽なので、面白い。
ただ問題点として、これもともと暴力的な手法であるから、たとえば男性向けラノベでは女性キャラクターを都合の良いように理解するみたいな、面白いけど不誠実だよなあみたいなことになりやすい。んで、この『これは経費で落ちません!』の良いところは、そのある種暴力的な快楽を伴う手法を、わりと誠実に使っているというところだと思う。たとえば、作中にサバサバ系女子みたいな人が出てきて「わたしは男っぽいから損してる」みたいな発言を何度もする。これってちょっと意地悪な書き方だなとも思うんだけど、途中でその人が結婚してそういう発言がなくなる。単に楽しい人になる。
嫌な人に感情移入させるメジャーな方法として、新庄耕がよくやる「序盤に嫌な人の嫌なところを一面的に描きつつ後半でがらっとその人の被害者的な面を出す(人物の立体感、キャラクターのアーク)」みたいなやり方があるんだけも、それとは別にこの作品みたいな、人って変わるよね、という描き方があるんだなあと勉強になった。これはこの作者の人間観が出ていてとても面白い。それに、なんというか、視座が自然でよい。おこがましくない。だからすごく好きなんだなと思う。
ここからは自分の話だけど、誠実に書くというのがおれの中ですごく大きな問題になってて、たとえば人物をどこまでデフォルメするかとか、とくに女性のキャラクターだと難しくて、書けねえなとなることが多い。ゆえにこの作品は俺にとって意味のあるものだったなと思う。よかった。7巻くらい出てるみたいなので読みたい。

『抗えない男 〜警視庁特殊能力係〜』

『これは経費で落ちません!』が良かったので、おなじオレンジ文庫の売れてるやつを3冊購入したんだけど、そのうちの一冊。ブラザーフッドものとでもいうのかな、顔の良い男がたくさん出てくる話だった。
特殊能力ってかいてあるからヒロアカみたいなもんか? と思ってたんだけどそういうのではなくて、記憶力がめっちゃいい人が一人いて、街を歩いて指名手配犯を見つけるってだけ。今作は実はシリーズの四作目らしく、主人公(記憶力がすごい)の所属する係に他の刑事(記憶力がすごい)が異動してきて、優秀なんだけどなんか裏で暴力団と繋がってるぽいな〜みたいな展開になった。
あんまりこの作品で表現される思想には共感しないのと、あと指名手配犯をポンポン捕まえるので、なんというか指名手配犯多すぎだろみたいな、この国治安悪いな〜というか、けどそういう描写もなくて設定緩いな〜と、そういう気になるところはあった。けど主人公の気持ちの流れがかなりスムーズだったり、こういう女性向け萌え系(なんで呼べばいいんだろ)らしいキャラの味付けはあったのかなと思う。男同士の絡みとかね、好きなのは分かる。
あとはやっぱ読みやすさかな。あんまり切迫したものがないし、気軽に読めるなと思う。

2020.12に見た漫画・映画・ドラマ

殺人者の記憶法

韓国映画。おじいちゃん殺人鬼がアルツハイマーにかかってしまい、記憶が消えていく中で新しい殺人鬼とバトルする話。信頼ならない語り手もので、どこまでが自分の犯行なのか分からなくなったり、過去の記憶が改竄されていたりの展開に振り回された。
題材になった事件が『殺人の追憶』と同じものらしく、タイトルも意識してるのかなーという感じ。韓国映画によくある前半コメディで後半シリアスな構成も良かった。おじいちゃんが筋トレしたり張り込みしたりするのも面白かった。

以下、ネタバレ気にせず詳細に語ります。

良かったな〜と思うのは前半のシュール?なコメディと、あと並行してサスペンスをやる技法。ざっくり話を書くと、主人公は連続殺人者の獣医なんだけど、アルツハイマーを発症して記憶が欠落しはじめる。そのせいで仕事もままならなくなるし、徘徊老人みたいになっちゃう。
そんな中で街では連続殺人が発生。主人公が霧の中で車を運転していると、偶然その殺人鬼の車に追突してしまう。そのときトランクが開き、そこには血の滲み出たボストンバッグが入っている。あ、こいつが殺人鬼だなと思ってるんだけど忘れてしまい、後日娘がそいつと歩いているのを見るかして思い出す。娘を守るためにあいつを捕まえるか殺すかしなければ! となる。
とはいえ主人公はアルツハイマーのおじいちゃんだからぜんぜん弱い。筋トレしようとして脚を痛めたり(切実)、昔のようにリンゴを素手で握りつぶそうとして出来なかったりする(そしていらついてリンゴは食べちゃう)。あと張り込みをしている最中にペットボトルにおしっこしたことを忘れて飲んじゃったり。スマホをフライパンで炒めたり。なんかそんなことばかり。
ここらへんの、シリアスな笑いがかなり良かった。あと同時に記憶を忘れるせいで殺人鬼にいいように扱われてしまったり、娘を仇と勘違いして殺そうとしてしまったり、殺人鬼と娘の結婚を許してしまったりなど、サスペンスしてるのも良かった。
後半はさらにシリアスになり、主人公の過去編や娘の話、最後の殺人、知り合いの刑事のドラマなどもりだくさん。かなりよかった。

『観相師』

韓国の王朝歴史もの映画。ソンガンホ主演で序盤は成り上がりもの、後半は歴史ものって感じ。韓国の歴史に詳しくなった。

『シグナル』

韓国ドラマ。過去と通信できる無線機を使って未解決事件を解決していく刑事もの。面白かった。なんかまだ続きのありそうな終わり方だなと思ったら続編があるらしい。楽しみ。

漫画は多分チェンソーマンとか進撃の巨人とか読んだ。巨人は次で終わっちゃうらしい。全然終わりそうにないけど。まじか〜〜〜。