親です。

読んだ本とかについて書いてます

2020.8月によんだ本とか

お疲れ様です。今月読んだ本。

2020.8月に読んだ本

『ホワイトラビット』

伊坂幸太郎らしい話だな〜〜と思ったことを覚えている。悪役がすごくサラリーマンっぽいのとか。そういう彼らしい世界の捉え方、みたいなのが良いよなと思う。

『韓国とキリスト教 いかにして国家的宗教になりえたか』

スマホに書いてあったメモをそのまま載せてしまうけど、

『韓国とキリスト教 いかにして国家的宗教になりえたか』を読んだ。
もともとエリート層に受け入れられていて、その後日本の統治時代に神社参詣を強制され、そこで民族的な意識と繋がったとかが面白かった。また宣教師による布教ではなく、国王が受洗され、そのご西洋近代主義を勉強するためにエリートが書籍から学んでいったというのも面白かった。
キリスト教朝鮮半島の近代化に与えた影響はかなり大きく、それによってエリート層がキリスト教信者になっていく。日本統治時代に抗日運動の中心としてプロテスタントが活躍する、そして日本の政策に弱腰だったカトリックはその後立場を弱めていく。
戦後もそれまでの日本への姿勢が原因で内部分裂。そのため個人主義的な教会が増える。個人主義的な教会が増える背景にはそもそも韓国のシャーマニズムもある。神を信仰するのではなく気に入った司祭のところに通う。そこからカルト的になるケースもある。
同時にプロテスタント教会が企業的に世襲、拝金に奔って収支を報告しないケースもあり、教会の独立性が高い。ここもカルト的になりうる要因。

『火定』

Twitterにアップした内容だけど、下記のような感想。

『火定』を読んだ。平安時代天然痘についての小説。歴史物を書く上でどれくらいの時代知識が必要なのか? というのが参考になったのと、あとはお話の作り方かなあ。導入も結構良かった。とくに諸男の導入。 主人公はふたりで、名代と諸男。ふたりが薬の買い付けで争う場面からはいる。序盤は名代が典薬寮(病院みたいなもん)を辞めたいというベースの問題が描かれる。
(ベースの問題と課題、葛藤が微妙に役割として違ってくる気がする。どれがどういう役割でどういう包含関係でどこまでが必要になるのか、というのを整理したい。ベースの問題はページを進めさせるのに必要で、半分演出的な問題になる。葛藤はそれに似ているが、もうちょい決断を求められるイメージ、けどあんまり違いがない。課題というと、プロットポイント的なイメージ。ベースとそうでないか、という整理をしてたんだな。それならベースのほうは演出だから課題だけでことたりはしそう。けどもちろんベースの問題として、サブテキストを利用するなどして課題を描き続けるのはわりとセオリーになりそう。)
名代のパートでトラブルの主である諸男について描き、そのあと諸男パート。諸男は前日譚のある男で、さきに名代パートで注意を引いておいたから前日譚を描くということができる。
あとずっと気になってることとして、プロットポイント1で登場人物が取り組む課題が明確になるまでをどう繋ぐのか? という問題があって、『火定』では第二幕以降の課題と接続しやすいベースの問題を設定として与えておくという手法をとっていた。具体的には、火定の主人公・名代は「パンデミックの中で命をかけて人を救うか、もしくは自分一人が助かる行動を取る(辞職して逃げる)か」の二択を迫られているんだけど、第一幕ですでに「中央官吏としての出世を目指していたが、出世の見込めない医療現場に配属されてしまう(辞職したい)」という葛藤を抱えている。
これは辞職するという行動のレベルで接続可能であり、ストーリーが明確になるまでのつなぎの課題として機能する。
これ、「契機事件(BS2におけるきっかけ)」ではダメなの? って思われるがかとも思うんだけど、おれが言ってるのは1ページ目から有効な課題のこと。契機事件だとセットアップが全体の1割くらいを占めるし、それまで主人公の日常的みたいなのを見せるのがだるいなと思っている。そのため、設定から持ってこれるベースの問題はひとつの解決策だなと思ってる。
あとこれはまた他の備忘録だけど、物語を作る上で、登場人物の課題をどう更新させていくかというのは一つの論点で、それがうまくできるとプロットポイントの多い、驚かされる、そしてテーマとしても考え尽くされたストーリーになる。最近だと『ヴィンランド・サガ』とかが良かった。
まあそんなかんじ。

『サブテキストで書く脚本術』

これは記事書いたので読んで欲しい。

物語を多層的に描く手法——『サブテキストで書く脚本術』の感想

まあ、勉強になりました。

『引きこもり令嬢は話のわかる聖獣番』1巻

ちょっと悪役令嬢ものというか、女性向けラノベというものをいくつか読もうと思って購入。面白かった。 ほっこりしていて敵キャラとかもいないんだけど、序盤のスピード感ありコメディタッチの演出がとってもよかったなあと思う。

フランス語の読み方の本

たらたらと読んだ。明日から文法。

『普通の人でいいのに』

これツイッターでバズってたやつ。 『Joker』っぽい話だなと思う。ジョーカーは共感させにきたけど、これは短い漫画だからなのか共感させず、嫌な感じで読ませている。タイトルもいいよね、婚活でよく聞くセリフである「普通の人でいいのに」を使って、何者にも成れない自分というテーマを描いている。

ハンター×ハンター』14〜18巻(G・I編)

風邪の中で。唐突に読みたくなったので。5巻とかで終わるんだってびっくりした。ハンターは話のまとめ方がうまいよなあと思う。

ヴィンランド・サガ』全巻

3巻無料で、3巻まではあんまり面白くなかったんだけど、4巻目からぐっと面白くなった。そして全部買った。
そういうふうに広がっていくんだ、というテーマの取り方が印象的だった。

『破滅フラグしかない乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった...』1〜2巻

こちらも悪役令嬢もの。漫画があったので読んだ。
これもめっちゃ面白かった。朴念仁な主人公って男性向けラノベではやり尽くされた感じあるけど、女性向けでやってもすごいいいんだなと思う。いやらしさがなくてすっきり読めるしね。

2020.8月に読んだ映画

千と千尋の神隠し

何度みたかわからん。疲れたときいつもこれ見てる。

『三度目の殺人』

是枝?監督のやつ。女性の書き方がアレなの除けば面白かった。

2020.8月に書いた小説

いま書いてます。エンタメに振ったやつ。なろうっぽい、ゲームみたいな世界観のやつ。2万文字とかでまとめられるといいんだけど。

今月はあんまりtwitterやらなかったのが一番の成果だと思う。あとTOEICのリスニングで400点くらい取れて、リーディングも同じくらいなら800点。渡航前は合計345点だったからめっちゃ成長した(ただTOEICできても英語は喋れないってやつ本当なんだなとも思った)。それと妻の学校が再開して日中育児、夜に仕事のサイクルが始まったり。他にもいろいろあった気がするが、まあ忘れた。

以上。

物語を多層的に描く手法——『サブテキストで書く脚本術』の感想

サブテキストで書く脚本術-映画の行間には何が潜んでいるのか-リンダ・シーガー』を読んだ。

最初からこんなこと書くのも失礼なんだけど、本書、読みづらくって一回離脱した。サブテキストについておもったことを気ままに書いた感じで、何が重要な概念であるとかが全く整理されていない。

ただサブテキストに目をつけたのは本当に意義深いことだとおもう。おかげで自分もこうしてまとめをできているわけだし。

今回はその内容をさらっと紹介したのち、脚本術におけるサブテキストの立ち位置を書く。


『サブテキストで書く脚本術』のまとめ

1. サブテキスト——定義とその広がり

サブテキストの定義について。 サブテキストとは、言葉や行動に現れていないが意図されたもののこと。 それが現実や作品にどういう形で現れるのか、具体例を交えて書かれている。

2. 言葉を通してサブテキストを表現する——登場人物の情報と経歴

登場人物のどういった情報がサブテキストで表現可能かについて書かれている。表現対象の話。 例として出てきたのは、

  1. 技能、才能、能力についてのメタ情報
  2. どれだけお金を持っているかについてのメタ情報
  3. 宗教を持つ/持たないとはどういうことかについてのメタ情報
  4. 真の欲望、欲求、目標を示唆するサブテキスト
  5. 影の部分を示すサブテキスト
  6. 否定、態度、隠蔽を示すサブテキスト

後ろ暗いものやメタ情報はテキストに直接出てこない。そのためサブテキストとして言葉の節々に現れることになる。

3. 言葉によってサブテキストを表現する技術

2は表現対象の話だったけど、3は表現技法の話。比喩とかダブルミーミングとか、いろんな手法でどう複数の文脈を生むか? というのをやってる。文章技法のレベルでサブテキストを生むという発想が案外なかったので参考になった。 列挙していくと、

  1. 直喩
    「〜のようだ」(直喩)を使う。テキストとは別にイメージが生まれる、と書かれている。 だがそれよりも、そういう比喩が話者のその物事の捉え方を示すという点でサブテキストを使えてるんだと思う。
  2. ほのめかして、明かす
    一度サブテキストの中に込めた真意を改めて言い直す。
  3. 中断して暗示する
    「ば——やめろ」みたいな、一回止めることで真意がありますよと示す。
  4. サブテキストを間違えて解釈する
    サブテキストのある状況を誤って解釈し、正しい解釈を提示し直す。遠藤周作っぽいな。
  5. 意味が響き合うように正しい言葉を選ぶ
    これも話者の解釈を伝えている。話者がどんな認識でいるか、それが出てくる言葉を使う。
  6. 同じ言葉を繰り返す
    一つの言葉を何度も使うことで、そこに辞書的な意味以上の意味を込める。
  7. ぼかし表現
    はっきりいうと角が立つことをぼかして示す。
  8. 裏に別の意味を持たせる
    別の話題全体が何かの比喩みたいになってるやつ。いきなり小鳥の話をしはじめたと思ったらそれを自分とダブらせているみたいなやつ。
  9. 裏に性的な意味を持たせる
    別の話題を使ってセックスについて話す。
  10. ダブルミーミング
    特定の言葉に複数の意味を持たせる。
  11. ト書きを選ぶ
    ト書きで小道具とかを指定し、そこに意味を持たせる。
  12. 名前を選ぶ
    そのキャラクターをしめすような名前。
  13. タイトルを通じてメタファーを作り出す
    タイトルに意味を込める。

4. 身振りや行動を通してサブテキストを表現する

ここも前章と同じく、身振りや行動でサブテキストを表現する細かなパターンについて書いている。列挙すると、

  1. ボディランゲージ
  2. リズムとペース
  3. 習慣的な振る舞い

また、キャラクターの決断や目標に絡むサブテキストについても触れられている。これはかなり重要な概念なので後ほどちゃんとした形で触れる。

5. イメージとメタファーを通してサブテキストを作り出す

セリフとかアクション以外にも、小物やらに意味を持たせる方法がある。列挙すると、

  1. 季節、天候、時間帯
  2. 映像、画像
  3. 小道具
  4. 登場人物をメタファーを通じて表す

6. ジャンルを通してサブテキストを表現する

特定のジャンルでよく扱われるサブテキストについて書かれている。

  1. ホラー
    文明批判のサブテキスト
  2. スポーツ
    勝ち負けのサブテキスト
  3. コメディ
    危険な行為をコメディ的な出来事でしかないと読ませる。 (というのがなぜサブテキストなのかは理解できなかった。)
  4. SF
    別世界を通して現実を描く。

7. 脚本家アルヴィン・サージェント、サブテキストに思いを巡らす

エッセイ。特に意味のある内容ではない。


サブテキストについての考察

内容の紹介は以上。

ここからは『サブテキスト〜』の内容を脚本術の文脈からまとめ直す。

目次は以下。

  1. サブテキストの定義
  2. 代表的なサブテキスト:中心的な問いのサブテキスト
  3. これから:サブテキストの広がり

1. サブテキストの定義

はじめにこの記事におけるサブテキストの定義と、この記事で議論するテーマついて書いておく。

『サブテキスト〜』ではサブテキストを「言葉と行動の表面から奥へと潜っていったところで煮えたぎっている真の意味」と書いていたが、今回議論するにあたり、その効用の面から下記の通り定義したいと思う。

サブテキストとはテキストに直接書かれた内容とは別に、ほかの文脈から暗黙のうちに与えられる意味である。それがもうひとつのテキストであるサブテキストだ。

ここではサブテキストの多層的な意味づけという技法について考えたい。サブテキストと簡単に呼んでしまっているが、手法自体はいろんな方法がある。全てを解説するには時間がないので、今回は特に代表的なサブテキストの手法でについて脚本術上の位置づけを含めて書き、それ以外の手法については最後に軽く触れる程度とする。

(注:用語について。「サブテキストのあるテキスト」という言葉は可読性をめちゃ損なうので、今後は単にサブテキスト、もしくは多層性のあるテキストと呼ぶことにする。適宜読みかえてほしい)

2. 代表的なサブテキスト;問いのサブテキスト

読者に意味の多層性を感じさせるものには色々とあるが、その中でも代表的なのが問いのサブテキストだと思う。これは既存の脚本術の体系で論じることができる。

問いのサブテキストの説明をする前に、脚本術における問いと答えの概念について説明する。

ストーリーの基本要素は出来事だが、その出来事を構成するのがアクションとリアクションだ。登場人物が何かを期待してアクションし、しかし期待とギャップのあるリアクションが返ってくるため、さらなるアクションが求められる。こうして出来事は連鎖し、ストーリーを編み上げる。このアクションとリアクションのペアのことを出来事と呼ぶ。この内容は『ストーリー』(ロバート・マッキー)に詳しい。

また出来事の連鎖はフラクタル構造をとっていて、出来事より大きなシーンだとか幕だとかお話全体だとかについても同じようなことが言える。

特にお話全体の構成については三幕構成と呼ばれる。内容は、まず第一幕で中心的な問題を提起し、第二幕で葛藤し、第三幕でそれが解決するというもの。

出来事は登場人物が動機をもち、行動し、その行動によって新たな動機を抱くことの繰り返しである。そして全体構成は第一幕で登場人物が物語を進める動機を得て、第三幕で解決する。出来事も全体構成も問いがたち解決される点で共通している。

物語においてこの問いと答えの要素は重要で、至る所にある。

そしてこの問いを利用したサブテキストが「問いのサブテキスト」になる。物語の中心的な問題や、主人公が抱える内面的な問題、そして特定シーンにおける目的など、物語中にはたくさんの問題がある。その問いが意識されているにせよされていないにせよ、主人公の行動に影響を及ぼし、読者にはその影響が見て取れるようなケースが問いのサブテキストである。

例をいくつか見てみよう。

主人公はあっけらかんとした性格。仲良くなりたい相手とのデートで失敗をし、それをとっさに隠してしまう。

隠すという行為にはサブテキストがある。デートを完璧にこなすという目的があるため、普段はしない隠蔽をしているのである。

離婚した父と意気揚々とハイキングに出かける主人公。森で聞いた鳥の鳴き声に父はカッコウだというが、姿が見えるとどう見てもそれはカラスだった。雨に打たれホテルに逃げ込むと、父はホテルの従業員を口説き始める。翌朝母に迎えに来てもらった主人公は経緯を話し、カッコウはカラスだったんだ、と告げる。
(『セックス・エデュケーション』)

これは主人公の「父を尊敬したいが、父はクソ野郎かもしれない」という問題が背景にある。序盤は尊敬したいという気持ちから意気揚々とし、その後の失敗のシーンは主人公の恐れが現実化する。カッコウはカラスだった、というセリフはそのまま父への想いを示している。背景にある問題があるからこそ活きてくるシーンである。

またこのサブテキストの重要な点は、サブテキストによって問いが強化されるということである。隠すという行為を通して主人公の想いの強さが理解できるし、カッコウはカラスだったというセリフが主人公の落胆を伝える。

つまりサブテキストのあるテキストは答えの一種であり、サブテキストは問いを反映する。答えに問いを反映させることで問いは強化されるというわけだ。

物語は問題がその解決を求め、解決が次の問題を誘発することで連鎖していく。このお互いがお互いを作り出す構造のなかで、問いのサブテキストも理解することができる。

3. サブテキストの豊富な実例

上で定義したように、重要なのは複数の意味・文脈をテキストに載せられることである。その手法は様々である。

  1. 中心的な問いのサブテキスト
    中心的な問い(例えば世界の滅亡を防ぐとか)が背景にあるサブテキスト。焦りを描いたりすれば中心的な問いの重大さが分かったりする。
  2. キャラクターのアークを示すサブテキスト
    登場人物の問題(例えば孤独感とか)が背景にあるサブテキスト。人を求める行動を繰り返せば登場人物の抱える問題で意味づけを行える。
  3. 社会的文脈のサブテキスト
    現実世界の社会的な問題(環境問題とか)を背景にするサブテキスト。物語中だけの問題ではないと示せば別の文脈がのる。
  4. 交錯するストーリーラインのサブテキスト
    物語の中で並行的に扱われる問題が別の問題に現れるサブテキスト。群像劇などによくあるケース。別の問題が影響する様を書けば、複数の文脈からテキストを意味づけできる。
  5. 世界観を表現するサブテキスト
    物語の世界観を示すサブテキスト。
  6. テーマを表すサブテキスト
    物語を統一するテーマを利用したサブテキスト。特定のテーマについて多角的に描くとき、別の視点が意識されて複数の文脈が乗る。
  7. パロディ・オマージュ
    別作品の模倣。これも別の意味が乗っているのでサブテキストの一種だと数えられる。
  8. 象徴性のサブテキスト
    モチーフを利用したサブテキスト。すでに出てきていたモチーフが、別の文脈を引き入れる。
  9. シーンの目的に対するサブテキスト
    シーンの目的を示すサブテキスト。そのシーン限りの目的が行動に影響する。

他にも色々ありそうだが、ぱっと思いつくのはこれくらい。

これらのサブテキストは明確に切り分けられていない。同時に効果をはっきしたり、組み合わせて何層もの意味づけがなされることもある。

4. その他の論点

以下はメモ。もうちょい別の論点から整理もできそう。

  1. サブテキストの手法
  2. サブテキストで描くべき対象

5. ほかの書籍でのサブテキストの扱い

  1. 『ストラクチャーから書く小説再入門』 『ストラクチャーから書く小説再入門』ではキャラクターの葛藤を描く際のテクニックとしてサブテキストが紹介されている。葛藤する対象はもちろんキャラクターの抱える問題なので、これは問いのサブテキストについての記述といえる。

とりあえず以上。

深大寺恋愛小説賞に応募した

概要

深大寺恋愛小説賞

というのに応募した。2,500文字くらいの掌編を書いた。本文は載せられないけど、あらすじを書いておくと、

おれとカズキは看護科に通うたったふたりの男子生徒で、ふたりが親友になるのは運命のようなものだった。けれどおれはカズキにある隠し事をしている。それはおれが同性愛者で、カズキに好意を抱いているということ。ただ、それを打ち明けるより先にカズキには彼女ができる。
親友としてカズキの恋愛相談を受け続け、ときはすぎる。カズキが結婚を考えていると言ったおりに、おれは精一杯の形で隠し事を伝える。「おれの一番信頼しているのはお前だ」その曖昧な言葉に、カズキは知っているよと返す。

以下で反省する。

反省点

時間もないしセイヤと送ってしまったが、反省できる点がいくつか。

  1. まとまりのなさ
    とっ散らかってて統一感がない気がする。モチーフを統一させた方が良かったかも。タバコがいらなかった気がする。
  2. 同性愛を扱うこと、勉強のできてなさ
    かなり安直に書いてしまった気がする。丁寧に書かないとダメだなと思っていくつか記事を読んだが、簡単に書いて良いものだったのかと思う。
    多分今後も同性愛は扱うと思うのでいろいろと読んでいきたい。
  3. 文章が荒れている
    これは書いてないからあたりまえ。毎月とか言わずに毎週書いた方がいいんだろうな。なんつーか毎日朝に一時間を小説に使うとか考えたけど、ただ、それでできんのかなあみたいに思う。悩んで終わりそう。
    今回みたいに2,500文字でがっと書くのは、プロット書かなくても良い。サッと書いて自分の中にある全体像を把握して、そこから物語の形を探っていけばいい。けどもうちょっと長い、1日とかで書けないお話になると全然全体像が掴めずに書けない。掴めてない中でどんどん書いていくのは結構きつい気がするから。 ここの書き方なんだよな。なんかまあ誰だって掌編なんてかけると思うんですけど、この書き方はそこそこ気に入っていて、そういう書き方でもう少し長いお話を書けたら楽しいだろうなと思う。
    一方で、この掌編くらいの密度で、これを長編のシーンとして書いていくってのも良いなと思う。いろんないいなを思ってる。
  4. 演出のカードが少ない
    少ない。あと下手。
  5. 自分にとって意味のあるテーマを扱えていない
    今回は「一番好きな人にする隠し事」というテーマでやったんだけど、これがまあ、そこそこ俺にとって意味のあるテーマではあるけど、こう、切実さが伝わんないなと思った。
    本来このテーマは相手との利害関係があって理解してもらえない、ということなんだけど、今回の話ではそれを入れられなかった。切実ではない。
  6. 手を抜いたなというシーンが明確にある
    ありました。
    カズキの恋愛相談シーンとか、土産物のシーンとか。これ全部のシーン納得できるもの描かないと賞取るとか無理なんだと思うけど、どうすれば納得できる演出をやれるんだろうな。
  7. タイトルを適当にやった
    花言葉使っちゃった。八つ目の大罪。来世はファミチキ

良かったのは

  1. ワンシーンで終わらせなかった
    最初はワンシーンで終わらせるしかないかなと思ってたんだけど、そこから構成を立て直していくつかのシーンで構成できたのは良かった。
  2. いくつかのドラマを並行させられた
    主人公のライン、がんと告知、あんずの話
  3. 書けた
    月一の記録がのびた。良いことだ。
  4. 土地のことをたくさん調べられた
    これは驚くんだけど、あるテーマを決めてから土地について調べるとそのテーマにあったことがどんどん出てくる、みたいなのがあって面白い。
  5. そこそこテーマとしてまとめられた
    まあそこそこだけど。「好きな人にする隠し事」「臆病な愛」

書き方について

書き方について、一万文字以下のもので最近よく「舞台をつめる」というやり方をとっている。

最初はテーマ設定からなんだけど、テーマを設定したら次に舞台を設定して、そこをgoogle mapとかで見て、どんな土地なのか、近くに面白い施設があるか、大学があるか、大学があるならどんな学科があるのかみたいなことを考える。テーマのことも考えつつで良いモチーフを探して、扱えそうなキャラクターも出して、書いていく。街に意味を持たせて、その街のものを使って話を構成する。

で、これはまあパズルみたいな感じで楽しいんだよな。面白いかは別問題だけど、統一感がでる。

なんというか、文章をかくとき、主人公が曖昧な世界に生きているとおれはかなり書けなくなってしまう。なので、具体的な土地を設定してどんなルートで帰宅してどのコンビニに入って何を買うのかってのを考える。そこが分かってないと、書くこと自体が苦しくなる。

主人公の生きる世界が分かってるととりあえず文章はかけるから、テーマとざっくりの流れを決めてザーッと書いて、それから外面的な問題を考え出したり、サブプロットを入れたり、テーマにあうモチーフを探してきて入れ込んだり、そういう調整をする。

上でも書いたけど、これをもっと長いお話でもやりたい。鉄腕は8,000文字でこれをやってて、多少いい感じに書けた。

これ、二万文字とかになると構成を意識して最初から書いてしまって、そうするとこうスカスカのシーンができる。そのシーンを埋めるがおれはかなり苦痛。物語に必要なシーンを先に考えて、一通り書いて、それから構成するなら多少良いが。

プロットの段階で物語を掴んで計画を立てる、というのがおれにはまだ難しいみたいだ。できたらいいんだけど。

ちょっと眠たいのでここまで。深夜に文章書くと、まだ考えられるなと思っても考えたくなくなるからよくない。けど深夜じゃないと書く時間がない。やだね。

最後に。関係ないんだけど、最近菓子パンを全く食べてなくて、カナダにきて良かったなって思います。夜中に腹減ってもりんごくらいしか食べられない。健康的。以上。

2020.7月に読んだ本(など)

お疲れ様です。7月に読んだ本とか、映画とか、漫画とか、あと書いた小説とかの話です。

2020.7月に読んだ本

平家物語

やっと読み終わった。1ヶ月くらいかけて読んでいた。 エピソードの集積なので細々とした感想が多かった。その感想はツイッターにまとめた。

mobile.twitter.com

(群青にサイレンの感想のように思えるけどこれアカウント名なのでリンク踏むとちゃんと連ツイで平家物語の感想やってます。)

あとこういう日本の古典みたいなのを通して読むのが久しぶりだったので、まあ教養として読んでよかったなとは思った。能の元ネタとかにもなってるらしいので、もし今後能をみるような機会に恵まれたら楽しめるなと思う。日本に一時帰国した時とかに見れたらいいな。

一時帰国、行って帰ってで100万円以上かかるから多分そんな機会はないと思うんだけど(と言いつつ健康診断とか受けに帰らないといけない気もする、カナダで受けれればいいんだけど、実際どうすればいいんだろう)、帰れるなら一週間くらい帰って日本でやり残した〜〜と思っていることをやりたい。

世界系エンタメ

これも感想を記事にした。

『〈面白さ〉の研究 世界観エンタメはなぜブームを生むのか』都留泰作 を読んだ - 親です。

世界観エンタメ、というくくりで何かを作ろうというふうには思わないけど、世界観の構築だとか設定をつめるときに考えたいことがたくさん書いてあって面白かった。設定周りについて普段あんまり考えないからありがたかった。

群青にサイレン

四連休に読んだ。これも感想を記事にした。

『群青にサイレン』が面白い - 親です。

こういう感じの作品が俺は大好きで、登場人物の間に走る関係性について延々書いているみたいなものを自分も書きたいなとよく思う。

2020.7月に観た映画

ジブリ映画

カリオストロの城』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』『崖の上のポニョ』『天空の城ラピュタ』を観た。最後まで観てないけど、ぽんぽこ、アリエッティ 、魔女宅も観た。

宮崎駿がこんなに普遍的なものを描ける作家だとは思ってなくて、確かにこれが世界で評価されるのも納得だなと思った。特にもののけ姫千と千尋、ポニョあたりがすごくて、まあ東アジアを描かせると(自分みたいに日本を離れてしまった人にとっては尚更)何かアイデンティティの原液みたいに感じられるんだろうなと思う。

千と千尋は二回観た。

2020.7月に書いた小説

今月は書けませんでした。

中編を諦めてからの2ヶ月は、短いお話を毎月一本ずつかけていたのだけど、今月はもうちょっと凝ったことをしたいなと思っていろいろとプロットをこねくり回していたら終わってしまった。手癖でかけるお話もいいんだけど(書かないよりは)、けど成長もないので頑張ってる。

やりたいのは構成を考えたもの。複数のドラマのラインが走っているような話。気を抜くと長くなってしまうから、うんうん悩みながらプロットを書いている。そろそろ書き出せるといいんだけど。

小説書くたびに文章が荒れてんなあと頭を抱えるんだが、月一程度でしか書いてなければそりゃあ文章も荒れるよなと思った。雑感。¥

今月は以上。今月もあんまり読まなかったな。寝る前に1時間くらいだらだらとしてしまうので、そこで本を読めるといいなと思う。あとプロット作業自体がだらだらしてる。日中は暇があると英語のリスニングをやってるので、これを3ヶ月くらい続けられるといいなと思っている。

追記

深大寺恋愛短編小説 深大寺恋物語、という短編の賞がある。

深大寺恋愛短編小説 深大寺恋物語 公式ホームページ

上限4,000文字なんだけど実際は40×20の用紙に5枚までなので3000文字とか書いたら文体によっては上限を超えてしまう。なので短編っていうかもうショートショートの賞なんだけど、これに出した。

締め切りの4日前? とかに妻が教えてくれて、書けそうだなと思ったからそこから書いてギリギリに提出した。とりあえず7月も書けてよかったな〜って感じです。

『群青にサイレン』が面白い

お疲れ様です。ネタバレありありで漫画の感想書くので嫌な人ははよ『群青にサイレン』買ってから以下読んでください。ジャンプ+からも読める。

ちょっとまあBL的に俺が読んでるので、そういう解釈したくない人はこの記事を読まないほうがいいかも。

『群青にサイレン』桃栗みかん

群青にサイレン - Amazon

群青にサイレン - ジャンプ+

が面白い。ジャンプ+で『怪獣8号』読も〜って思ってたら目に入ったので読んだんだが、めっちゃ面白かった。作者は『いちご100%』の河下水希で、桃栗みかんというのは(多分)少女漫画の方で書くときの別名義。

あらすじを書くと、

小学校の野球部で修二はエースだった。ただ、いとこの空が越してくると、なんでもできる空に自分のアイデンティティと言えるものを全て奪われてしまう。中学から空はイギリスに留学したものの、修二は敗北感を抱えながら生きていた。
高校で修二と空は再会する。敗北感を感じる日々が始まるのかと恐れる修二だったが、身長の低い空をみて、今なら野球で勝てると思い、空と一緒に野球部に入部する。

球漫画です、しかし心理描写があ〜〜〜〜〜〜うまい〜〜〜〜〜という感じ。この心理描写の妙はストーリーラインにも現れている。ひねくれた動機だけどすごくしっくりくる。

で、この後また主人公が空にピッチャーの座を奪われてしまうのとか、主人公が過去の事件のせいでイップスになってるのとか、こういうトラウマの作り方が上手だなあと思う。あとキャッチャーとして空の球を受けることへの抵抗感をベースにして描いていて、こういうベースの感情を作って物語を進めるというのも上手。

ベースに負の感情を持ってくるのって例えばゾンビものとかがその類型で、常に状況が危機みたいな手法がよくみられる。今回は主人公が敗北感を感じ続けるというもので、これは結構読者にストレスかかるんだけど、それ一辺倒というわけでもないし、周囲のキャラクターが明るいからなのか読めるな〜〜と思う。まあ絵がばちくそうまいってのもあるんだろうけど。

いやしかしね、めっちゃ造形かわいいんすよ空くん、そんで序盤は修二のこと大好き〜〜〜みたいな感じできてるんだけど修二は表面上は取り合ってるが内心めちゃくちゃ空が嫌いみたいな。で、ずっと優しくできないんすよ空に。キャッチャーってピッチャーをどう盛り立てるかというのもひとつの仕事だからそういうことやらないといけないんだけど、表面的にできるようになってもやっぱ内心は嫌ってるみたいなのとか、もうとにかくこういう社会的な振る舞いを書くのが上手だなあとも思っってですね。。

もう本当、あらま...みたいなシーンが多いんですよね。かわいいね、みんなね、本当ね...。釘崎の好きな食べ物がグミってのもね、なんかヤバイっすね...。それ守屋の乳首の暗喩か...?

『群青にサイレン』の強み

なんか普通にイイネ...というだけのブログになってしまいそうだったんだけど、当初筆をとった動機は本作のどこが良いのか真剣に考えたいなというものでした。なのでここからそれを書く。

  1. 関係性のおおさ
    主人公—空、主人公—母、主人公—リトルの監督、主人公—父、主人公—守屋とかまあそんな感じで、複数の関係性とドラマを配置しているのは(基本中の基本なんだけど)良いなあと思う。巻末おまけのキャラクター紹介でも、主人公との関係性をきっかけに何人かのキャラクターが生まれたりしていてなるほどなと思った。
    また本作の魅力というお題からはずれるが、こういう関係性を作るときに、過去の出来事を持ってきて関係性を作るのと、現在のふたりを描いて関係性を作る方法のふたつが当然あるわけだけど、このふたつの作劇的なやり方の違いみたいなのに興味がある。(というのは、俺は割とキャラクターの抱えた過去のトラウマを話のピークに持ってきてしまう癖があって、しかしそうではなくて現在の話を話のピークに持ってきたいなあと思う。そのため後者のやり方を知りたい)
    例えば今作の兼子先輩と鈴木先輩の関係性は過去の出来事がメイン(?)。これはストーリーラインにあまり関係なく過去の出来事が語られる(もちろん入れられる場所とか、あと効果的な挿入ポイントというのはあるんだが、物理的に挟めないエピソードみたいなのとはまた違った制約になる)。
    対して修二と空の話はもちろん過去話もあるが現在進行形のストーリーとして扱われていく。
    まあ現在のドラマで話を作ろうとすると、主人公にとってどんな意味のある出来事が起きるか、みたいな、なんかこうドラマとしての連なりのあるものを書かなくちゃいけなくて、それが俺は下手なんだな(致命的)。
  2. 関係性のタイプ
    いろんなのがあった。
    嫌い(吉沢修二→吉沢空)、エースとエースになれなかった自分(修二→空)、尊敬(修二→守屋)、加害(修二→空)、投手を諦めた人繋がり(修二、鈴木アキ先輩)、夢をたくす人(玉井先輩→修二)、居場所を奪う人二号(修二→片山)
    これ全然一部なんだけど、これだけ関係性作れるんだなあという感じ。いろんな関係性を見せる、というのはそれだけドラマがあったってことだから、良いよな。
  3. (能力ありきで作られた)自分の居場所というテーマ
    主人公がずっと悩めるテーマでよかったなと思う。
  4. 嫌いという感情を書き続けたこと
    負の感情を正面から書き続けて、かつバッテリーであるという社会的な要請で仲良くしなきゃいけない、とかも面白かった。

まあこんなところ。ちょっと自分の小説も書きたいので以上。

『〈面白さ〉の研究 世界観エンタメはなぜブームを生むのか』都留泰作 を読んだ

おつかれさまです。 『〈面白さ〉の研究 世界観エンタメはなぜブームを生むのか』という本を読んだので、感想を書いておこうと思います。

概要

文化人類学者であり漫画家でもある筆者・都留泰作が世界観エンタメというくくりでエンタメの世界観構築について書いている本。

異文化の特性やら世界観を捉えるのは文化人類学者の専門分野。そういう専門的な視点から書かれていて面白かった。

以下詳細


ドラマツルギー VS 世界観エンタメ

従来エンタメの王道だと思われてきた、ドラマツルギー重視の物語と対比させて、むしろキャラクターの内面などはあまり描かず世界観にこそ軸足を置く「世界観エンタメ」について解説している。

世界観エンタメは、受け手に世界観を共有させることで面白さを伝える。世界観というのはつまり受け手の感覚を通した環境の認知みたいなもんだが、それを構成する要素はいくつかある。

  1. 空間感覚
  2. 時間感覚
  3. 社会的感覚

ここらへん。それぞれ以下にまとめる。

空間感覚

モノなどの空間的になにがあるかの情報。といっても人間の生活に関連のないモノを書いていってもあまり意味がない。

ここでは『スター・ウォーズ』(以降SW)を例にとって空間感覚についての解説をしている。スペオペというジャンルは、ともすればただの設定集になりがち。しかしSWは植民地の民族文化を改変して宇宙人の文化として登場させ流など、異文化をリアルに体験できるものとして書いている。これが空間感覚の例としてぴったりなのだという。(俺はSWにあまりのめり込めなかったのでよく分からん。映画も毎回寝てる)

この異文化を楽しめること(筆者の言葉ではリゾート的快楽とも言われる)こそが空間感覚の設定において重要だという。

とはいえどうやってそのリアルな空間感覚を掴ませるのか、というのは作者の技量。そこのところは特に書かれていなかった(と思っている)。

時間感覚

なぜ時間か?

空間感覚を精緻に描くことで世界観が作られる、のではあるが、ただ厳密に描かれるだけでは無味乾燥になってしまう問題もある。

ちょっと面白かったところを引用すると、

「学術的な業績のなかには、特に『調査報告』といわれてきたもののなかには、部族生活の、いわばみごとな骨組みが描かれてはいるが、血肉が与えられていない」。[...]ただ精密・厳密なだけで無味乾燥な記述によっては、「人間生活の現実、日常の出来事の静かな流れ、祭や儀式、またはある珍しい事件をめぐって起こる興奮のざわめきを想像することも、膚に感ずることもできない」[...]
人間的現実という「血肉」を与えることで、空間は生き生きと息づき始め、面白くなってくるのである。人間的現実の本質とも言える部分を構成する、この要素のことを、マリノフスキーは「実生活の不可量部分」と呼ぶ。「資料を調べたり算定したりするのでは記録できない、一連の重要な現象があり、これらはその実態を観察してはじめて理解できる」。具体的には、「平日のありふれた出来事、身じたく、料理や食事の方法、村の焚火の回りでの社交生活や会話の調子、人々のあいだの強い敵意や友情、共感や嫌悪、個人的な虚栄と野心」(前掲書、八七頁。本段落の引用部全て)といったようなことである。

この不可量部分という言葉は本書に何度も出てくる。世界観をよく描けているものを、不可量部分の描けている作品といったり。

で、その不可量部分を描くためには、空間的感覚を突き詰めるだけではなく、時間感覚についても示していけると良い。

時間感覚とは

時間感覚とは、その世界での人々の生きる時間のこと。どういうタイムテーブルで動いているかとか、そういう生活感の見えるもののことだ。

本文だとナイロビに住む人々を例にかなりわかりやすく解説されている。

いろんな時間帯の街の変化とか、なにかときを感じさせるものを取り入れると良いといった感じか。

五感

不可量部分の話題から派生して、ここで五感を押さえよという話題が入っていた。

視覚情報だけではなくいろんな感覚を刺激しましょうね、というやつ。これは小説の指南本でよく言われることではある。

抽象化

不可量部分の話題から再び派生して、抽象化。

具体的に異文化を描くのではなく、抽象度の高いもので描き切ってしまう、という手法。象徴となる事件、みたいな感じかなと思ってる。 (あんまちゃんと読んでないここは)

社会的感覚

世界観を構築する要素としての人間について

具体例を出すと、教室の中での立ち位置を意識するとか、他人から見た自分を意識するとか、組織がどういう体質だとか、組織の持つ問題だとか、そういう複雑系のお話。一対一ではなくて。

こういう、一対一ではなくて場の問題を意識するみたいなのがあるんだなと思うなど。

居住感覚との対局、ホラー描写

最後にこれ入れてくるのはいいなと思った。
今まで書いてきた異文化を理解するという立場から、理解できない対象を描くことへ。


感想

既存のドラマツルギーにたよった面白さではなく、世界観を描くことによる面白さについて書いてる。五感、空間時間、社会的な感覚によって住まわされるような世界観を作る。

たしかにこういう、その作品世界に浸れるような作品ってあるなあと思う。たとえば千と千尋、漫画だとチェンソーマンもそう思う、雰囲気のある作品だなと思える奴はだいたいそう。

筆者は文化人類学者としての立場から、こういう異文化を全体的に捉えることをやってきていて、それらが五感やタイムテーブル、社会的な感覚によって作られるといっている。

既存のドラマツルギー以外の楽しませ方というのが面白いなとも思うし、それが脚本術の範囲から頭を出すようなものなのかなみたいなことを思いながら読んだ。

「その世界に住まわされているかのように感じて面白い」という感覚って、これは一体どのポイントについて面白いと感じているのかなあと疑問に思う。というのはたとえば、本を読んでて、いま、面白いなみたいに思うことがあると思うけど、そのいまは世界観エンタメでいつ生まれるのか。

これが特定の時点で生まれるわけではないとかだったら、世界観エンタメは普段は脚本術的なテクニックで読者を読ませ、そして背景としての世界観を精緻に描くことで意識しないうちにじわじわ面白くなっていくみたいな感じなんだろうか。

そういう土台みたいなやつなら、たとえば脚本術における舞台設定の話とも繋がると思う。舞台はなるべく減らして、象徴的な意味を持たせて、みたいなのはそうすることで象徴的なレベルでの意味づけを増やせるからだし、描く場所が減ればそのぶん厚くかける。あと一度出た人をまた出しやすいなど。

なんか自分はエンタメっぽいものを書こうと思うとめちゃくちゃ筆が止まってしまうんだけど、そこにはこういう世界観へのひたれなさがあるのかもしれない。また、前回の短編『鉄腕』を書いた時も、舞台を津田沼にしようと決めた瞬間に書きやすくなった。津田沼の様子をGoogleMapで調べて、どういう街の特性があるとか、どんなところにどんな施設があるとか、そういうことを考えて初めて書けるぞと思った。

これらから思うのは世界観を捉えることで書きやすくもなるだろうなということで、自分は今までエンタメっぽいの書けないなあと思ってたけど、単に世界観の詰め方が甘かっただけとも言える。

もしそうなら大変ありがたい話だ。

自分の話になっちゃったけど、とりあえずこんなもんです。以上。

「物語の構成法は物語を単調にする」か?

「物語の構成法は物語を単調にする」という意見について、もう百万回くらい見てるんだけど、それに対してぼんやり抱える気持ちみたいなのをちゃんと書いてなかったなと思って、書いておく(もしかしたら過去に書いているかも知れんが...)

前提

言葉の定義をちょっとする。

「物語の構成法」とは何か?

物語の構成法とはなんのことか? たぶんこれは三幕構成のこと、もしかしたらBS2(『SAVE THE CATの法則』)やそれに類似した物語のテンプレートのことかなと思う。

「物語を単調にする」とは何か?

これは似通った話にしてしまう、ということかと思う。

すでにされている指摘

この「物語の構成法が物語を単調にする」という意見に対して指摘されているのは、それが浅い意見であり、構成が同じでも全く違った印象の物語にすることは可能だというもの。自分も基本的にそう思う。実際趣味として自分で書いていても、構成云々より演出の幅のなさの方が圧倒的に単調さを作っている。

とはいえ、似通ってしまうポイント

とはいえ、例えば「お話の中盤まで上手いこと行ってたのに、終盤に差し掛かったところで危機的な状況に陥ってしまう」というようなのは確かにいろんな物語にあって、これが支配的な状況ってのは若干だるいなとは思ったりする。

脚本の要請でそれまで感情移入してきたキャラクターたちが不自然にひどい目に遭う、みたいな展開にゲンナリするのは理解できる。最終的に解決されるとも分かってるし、予定調和な感もある。

この問題に対して、それは演出の問題であるとか、物語にのめり込んでいればそんなことは気にならないとか、そういう反論をしてみることも可能だけど、問題はそういう予定調和で単調なストーリーが目に付くということだよなあと思う。

実際そういう「上がって、下がって、上がる」型があって、構成法に寄りかかってしまった結果単調な話の作り方が生まれているのは確かだ。つまりこれは物語の構成法が便利な道具として使われており、創作者の怠慢を許しているのではないかとは思う。(自分ごときが実際に創作する人に対して怠慢を指摘できるとも思わないが...)

シンデレラ曲線と6つの原型

先ほど「上がって、下がって、上がる」型、という言葉を使ったが、こういう構成をシンデレラ型の構成と呼ぶ。これは他にもいろんな型があって「物語の作り方は6つしかないことがビッグデータ解析で判明 - MIT Technology Review」という記事ではこのように紹介されている。

『地下の国のアリス』(ルイス・キャロル)など、立身出世物語に見られる、感情値の「一定して継続的な上昇」型
ロミオとジュリエット』(ウィリアム・シェイクスピア)など、悲劇に見られる、感情値の「一定して継続的な下降」型
ヴォネガットが説明した穴の中の男の物語のような感情値の「下降から上昇」型
イカロス』(ギリシャ神話)など、感情値の「上昇から下降」型
『シンデレラ』(グリム童話等)など、感情値の「上昇⇒下降⇒上昇」型
オイディプス』(ギリシャ神話)など、感情値の「下降⇒上昇⇒下降」型
研究チームは、感情の弧とダウンロード数の相関関係を調べて、どの型の弧に人気があるのかも検証した。すると、最も人気が高いのは、イカロスとオイディプス型の物語と、複数の基本的な構成要素が順次使用された複雑な型の物語だとわかった。特に、2つの連続的な穴の中の男の弧を持つ物語と、シンデレラの弧の後に悲劇が続く物語が一番人気である、とチームは供述している。

で、例えばBS2で利用されたり他のいろんなテンプレートは大概がこの「2つの連続的な穴の中の男の弧を持つ物語と、シンデレラの弧の後に悲劇が続く物語」だったりする。三幕構成はそこまで縛ってないと思うが(三幕構成あんまり詳しくない)、つまり言いたいのは現代のエンタメでもっぱら使われているのはこれまで英語圏の人間が発見してきた物語の類型のうちの、ひとつでしかないということだ。

(これ組み合わせがOKなら全ての原型はアリスとロミジュリの組み合わせであるようにも思えるが。元の論文を読んでないので知らん)

まとめ

というわけで思ったのは、

  1. 構成が同じでも物語の印象はかなり違う
  2. むしろ演出が下手だと同じようなものになりがち
  3. 演出ができなくても構成があればそこそこ作れてしまうので、安易に同じようなものが生まれる土壌にはなってるのでは?
  4. 現代のテンプレートは偏ってるので、いまあるもの以外のテンプレートもメジャーになって欲しい

ということ。

最後に、プロジェクトグーテンベルク英語圏青空文庫)に入っている物語の感情曲線をプロットしているページのご紹介。すごいなあ。
hedonometer

以上!